2022年2月4日

【第4回垂れ流し数学模試】理型第2問・文型第3問解説

皆さんこんにちは!
TomoKです。

今回は 第4回垂れ流し数学模試 の 理型第2問・文系第3問 を解説しようと思います。

理型 第2問 / 文型 第3問

問題

次の問いに答えよ.

  1. 次の条件を満たす自然数$a$, $b$, $c$, $d$の組で, $d$が最小となるものを求めよ.
    条件 : すべての実数$x$, $y$に対して, 常に$2(ax+by)^2-(cx+dy)^2=2x^2-y^2$が成り立つ.
  2. $n$を自然数とするとき, $n\sqrt{2}$の小数第1位が$0$となるような$n$は無数に存在することを証明せよ.

理型第2問・文型第3問は整数問題枠として出題しましたが,
どちらかというと論証メインな問題かもしれません。
(2)は文型・理型を問わずいろんな解法での答案をお寄せいただいて,
拝見してとても興味深かった問題でした。

この(2)は(1)がヒントとなっていますが, (1)を使わなくても(2)単体で解くことが可能です。
実際(1)を使わずに(2)を解いてくださった方もいました。

解答のために考えること

(1)は条件で与えられた$x$, $y$に関する等式が恒等式となるための条件が不定方程式となります。
この自然数となる一般解を求めるのは難しいですが, いくつか簡単に見つかる解があるので, $d=1$から順に探していきましょう.

(2)は$n\sqrt{2}$の整数部分を$a$とするとき,
$0\lt n\sqrt{2}-a\lt \dfrac{1}{10}$が満たされるような$n$が無限に存在すればよいことになりますが,
この不等式の各辺に$a$を足して2乗すると$a^2\lt 2n^2\lt a^2+\dfrac{1}{5}a+\dfrac{1}{100}$,
すなわち$0\lt 2n^2-a^2\lt \dfrac{1}{5}a+\dfrac{1}{100}$です.

一方, 数列$\{x_k\}$, $\{y_k\}$を, $x_1=y_1=1$,
また(1)で求めた$(a, b, c, d)$により全ての自然数$k$に対し$x_{k+1}=ax_k+by_k$, $y_{k+1}=cx_k+dy_k$
とすることで定めると,
全ての自然数$k$に対して$2{x_k}^2-{y_k}^2=2{x_1}^2-{y_1}^2=1$,
かつ$k$がある自然数$K$より大きければ$y_k\geqq 5$になるので, $0\lt 2{x_k}^2-{y_k}^2=1\lt \dfrac{1}{5}y_k+\dfrac{1}{100}$を満たします.

(2)の別解として, (1)を用いない方法を2種類取り上げます.
1つ目は, $n\sqrt{2}$の小数第1位が0である$n$を1つとって,
その整数倍の小数部分に着目する方法です.
2つ目は, やはり$n\sqrt{2}$の小数第1位が0である$n$を1つとるとき,
$n\sqrt{2}$の小数部分の累乗が$\dfrac{1}{10}$より小さいことを利用する方法です.

解答

  1. $2(ax+by)^2-(cx+dy)^2=2x^2-y^2$を変形して, $(2a^2-c^2)x^2+2(2ab-cd)xy+(2b^2-d^2)y^2=2x^2-y^2$
    これが任意の実数$x$, $y$で成り立つので,

    $2a^2-c^2=2$ …①,$2ab-cd=0$ …②,$2b^2-d^2=-1$ …③

    ③を満たす自然数$(b, d)$で, $d$が最小となるものを探す.
    $d=1$のとき, $2b^2=1-1=0$, $b^2=0$, これを満たす自然数$b$は存在しない.
    $d=2$のとき, $2b^2=4-1=3$, $b^2=\dfrac{3}{2}$, これを満たす自然数$b$は存在しない.
    $d=3$のとき, $2b^2=9-1=8$, $b^2=4$, これを満たす自然数$b$は$b=2$のみ.

    $(b, d)=(2, 3)$のとき, ②より$4a=3c$,
    これと①により$2\cdot\left(\dfrac{3}{4}c\right)^2-c^2=2$, $c^2=16$
    $c$は自然数より$c=4$, ゆえに$a=\dfrac{3}{4}\cdot 4=3$

    以上より, 条件を満たす$d$が最小となる$(a, b, c, d)$の組は,
    $\bold{(a, b. c. d)=(3, 2, 4, 3)}$である.

  2. $n\sqrt{2}$の整数部分を$a$とすると, \[\begin{aligned} n\sqrt{2}\textrm{の小数第1位が0} &\Leftrightarrow a\lt n\sqrt{2}\lt a+\dfrac{1}{10}\\ &\Leftrightarrow a^2\lt 2n^2\lt \left(a+\dfrac{1}{10}\right)^2=a^2+\dfrac{1}{5}a+\dfrac{1}{100}\\ &\Leftrightarrow 0\lt 2n^2-a^2\lt \dfrac{1}{5}a+\dfrac{1}{100} \end{aligned}\] (ただし1行目において$\sqrt{2}$が無理数であること,
    2行目で$a, n\sqrt{2}, a+\dfrac{1}{10}\gt 0$を用いた)

    よって, $0\lt 2n^2-a^2\lt \dfrac{1}{5}a+\dfrac{1}{100}$を満たす自然数$(n, a)$の組が無数に存在することを示せばよい.

    (1)の結果から, 数列$\{x_k\}$, $\{y_k\}$を, \[x_1=y_1=1,\quad \left\{\begin{array}{ll}x_{k+1}&=3x_k+2y_k\\y_{k+1}&=4x_k+3y_k\end{array}\right.\quad (k=1, 2, 3. \cdots)\] で帰納的に定めると, 任意の自然数$k$において \[2{x_k}^2-{y_k}^2=2{x_{k-1}}^2-{y_{k-1}}^2=\cdots =2{x_1}^2-{y_1}^2=1\] また任意の自然数$k$に対し$x_k$, $y_k$は自然数であり,
    数列$\{x_k\}$, $\{y_k\}$はともに(狭義)単調増加数列(任意の自然数$k$に対して$x_{k+1}>x_k$かつ$y_{k+1}>y_k$)である.

    したがって数列$\{y_k\}$について, ある自然数$K_0$よりも大きい任意の自然数$k$に対して$k\geqq 5$であるので, そのような$k$に対して, \[0\lt 2{x_k}^2-{y_k}^2=1\lt \dfrac{1}{5}y_k+\dfrac{1}{100}\]

    以上により, 上記の数列$\{x_k\}$, $\{y_k\}$と上でとった自然数$K_0$に対して,

    $k\gt K_0$ ならば $x_k\sqrt{2}$の小数第1位が0

    となり, $n\sqrt{2}$の小数第1位が0となる自然数$n$が無数に存在することが示された. (終)

本解では$k>K_0$のとき$y_k\geqq 5$としましたが,
実際$y_k=7$なので$K_0=1$です.

実際に計算してみると,
$x_2=5$, $y_2=7$より$7=\sqrt{49}\lt 5\sqrt{2}=\sqrt{50}\lt 7.1=\sqrt{50.41}$
$x_3=29$, $y_2=41$より$41=\sqrt{1681}\lt 29\sqrt{2}=\sqrt{1682}\lt 41.1=\sqrt{1689.21}$
$x_4=169$, $y_2=239$より$239=\sqrt{57121}\lt 169\sqrt{2}=\sqrt{57122}\lt 239.1=\sqrt{57168.81}$
などとなっており, いずれも$x_k\sqrt{2}$の小数第1位が0になっています.

また本解では$2{x_k}^2-{y_k}^2=1$となる数列$\{x_k\}$, $\{y_k\}$を作りましたが,
実際には$2{x_k}^2-{y_k}^2$が正かつ一定であれば何でもよいです.

たとえば同じ漸化式で$x_1=2$, $y_1=1$とすると任意の$k$に対して$2{x_k}^2-{y_k}^2=2{x_1}^2-{y_1}^2=7$になるわけですが,
$\dfrac{1}{5}a+\dfrac{1}{100}>7$となる自然数$a$は$a\geqq 35$なので,
$y_k\geqq 35$となるように$k>K_0$の$K_0$をとってくればよいわけですね.
(実際に計算すると, $(x_2, y_2)=(8,11)$, $(x_3, y_3)=(46, 65)$となって$K_0=2$ですね。
$65=\sqrt{4225}\lt 46\sqrt{2}=\sqrt{4232}\lt 65.1=\sqrt{4238.01}$で, 確かにそれっぽいです.)

ちなみに本解同様(1)を用いて$2{x_k}^2-{y_k}^2=d$となる数列$\{x_k\}$, $\{y_k\}$を作ったうえで,
たとえば$\sqrt{{y_k}^2+d}-y_k=\dfrac{d}{\sqrt{{y_k}^2+d}+y_k}$がある$K$以上の$k$で$\dfrac{1}{10}$より小さくなることを示してもよいと思います.
というかそっちのほうがより直接的かもしれません.
実際この場合, たとえば$y_k\geqq 5d$ならば$\sqrt{{y_k}^2+d}-y_k\lt\dfrac{1}{10}$と考えられますね.

また, この$\sqrt{{y_k}^2+d}-y_k\lt\dfrac{1}{10}$を,
$\dlim_{k\to \infty}\left(\sqrt{{y_k}^2+d}-y_k\right)=0$を根拠として示すのもいいと思います.

別解に移ります.
1つ目は, $n\sqrt{2}$の小数第1位が0である$n$を見つけて, その整数倍の小数部分に着目する方法です.

(2) 別解1

$7=\sqrt{49}\lt 5\sqrt{2}=\sqrt{50}\lt 7.1=\sqrt{50.41}$より,
$n=5$のとき$n\sqrt{2}$の小数第1位は0である.
ここで, $5\sqrt{2}-7$は無理数だから, $0\lt 5\sqrt{2}-7\lt\dfrac{1}{10}$, $\dfrac{1}{5\sqrt{2}-7}>10$である.

そこで, 自然数からなる数列$\{a_k\}$で, 任意の自然数$k$に対し$a_k\sqrt{2}$の小数第1位が0であるようなものを, 次のようにして構成できる.

  • 自然数$k$に対して$\dfrac{k-1}{5\sqrt{2}-7}$の整数部分を$m$とおけば,
    $\dfrac{k}{5\sqrt{2}-7}$も無理数より, $(10k\leqq)m\lt \dfrac{k}{5\sqrt{2}-7}\lt m+1$, $\dfrac{1}{m+1}\lt \dfrac{5\sqrt{2}-7}{k}\lt \dfrac{1}{m}$なので, \[k\lt (5\sqrt{2}-7)(m+1)\lt \left(1+\dfrac{1}{m}\right)k\leqq k+\dfrac{1}{10}\] よって \[k+7(m+1)\lt 5(m+1)\sqrt{2}\lt k+7(m+1)+\dfrac{1}{10}\] であるから, $5(m+1)\sqrt{2}$は整数部分が$k+7(m+1)$で, 小数第1位は0である.
    このとき, $a_k=k+7(m+1)$と定める.

以上により定まる数列$\{a_k\}$は, $k$の増加とともに$m$も増加する(つまり狭義単調増加数列).
したがって, $n\sqrt{2}$の小数第1位が0になる自然数$n$が無数に存在することが示された. (終)

この解法に近い考え方で, 数式をあまり使わずに説明すれば,
「小数第1位が0である数を何回かたし続けると,
それらの小数第1位は0, 1, 2, 3, …, 9のすべてを順にとっていき,
9の次に小数第1位が変化すれば, その小数第1位は必ず0になる」
という風にも説明できると思います.

上に挙げた解法1では何回か足す代わりに, 直接"小数部分を何回たせば1を超えるか"を考える形をとっています.

実際に解法1の方法で数列$\{a_k\}$を最初の3項計算してみると,

  • $\dfrac{1}{5\sqrt{2}-7}=5\sqrt{2}+7$の整数部分は14だから, $a_1=5(14+1)=75$
    $1+7(14+1)=106$で, $106=\sqrt{11236}\lt 75\sqrt{2}=\sqrt{11250}\lt 106.1=\sqrt{11257.21}$
  • $\dfrac{2}{5\sqrt{2}-7}=10\sqrt{2}+14$の整数部分は28だから, $a_2=5(28+1)=145$
    $2+7(28+1)=205$で, $205=\sqrt{42025}\lt 145\sqrt{2}=\sqrt{42050}\lt 205.1=\sqrt{42066.01}$
  • $\dfrac{3}{5\sqrt{2}-7}=15\sqrt{2}+21$の整数部分は42だから, $a_3=5(42+1)=215$
    $3+7(42+1)=304$で, $304=\sqrt{92416}\lt 215\sqrt{2}=\sqrt{92450}\lt 304.1=\sqrt{92476.81}$

となります。
以降しばらく$\dfrac{k}{5\sqrt{2}-7}$の整数部分は14の倍数になりますが,
いつまでもそうではなく, $k=15$のとき,

  • $\dfrac{15}{5\sqrt{2}-7}=75\sqrt{2}+105$の整数部分は211(≠14×15)だから, $a_{15}=5(211+1)=1060$
    $15+7(211+1)=1499$で, $1499=\sqrt{2247001}\lt 1060\sqrt{2}=\sqrt{2247200}\lt 1499.1=\sqrt{2247300.81}$

となります.

別解2です.
同じく$n\sqrt{2}$の小数第1位が0である$n$を1つとって, そのあとに累乗を繰り返していきます.

(2) 別解2

$7=\sqrt{49}\lt 5\sqrt{2}=\sqrt{50}\lt 7.1=\sqrt{50.41}$より,
$n=5$のとき$n\sqrt{2}$の小数第1位は0である.
すなわち, $0\lt 5\sqrt{2}-7\lt\dfrac{1}{10}$であるので,
任意の自然数$m$に対し$0\lt (5\sqrt{2}-7)^m\lt \dfrac{1}{10^m}\leqq \dfrac{1}{10}$である.

以下, $k$を自然数とするとき, $(5\sqrt{2}-7)^{2k-1}=a_k\sqrt{2}-b_k$となるような自然数$a_k$, $b_k$が存在することを, 数学的帰納法で示す.

  • $k=1$のとき, $(5\sqrt{2}-7)^1=5\sqrt{2}-7$より$a_1=5$, $b_1=7$.

  • ある自然数$k$に対して$(5\sqrt{2}-7)^{2k-1}=a_k\sqrt{2}-b_k$となるような自然数$a_k$, $b_k$が存在すると仮定すると, \[\begin{aligned} (5\sqrt{2}-7)^{2(k+1)-1}&=(5\sqrt{2}-7)^{2k-1}(5\sqrt{2}-7)^2=(a_k\sqrt{2}-b_k)(99-70\sqrt{2})\\ &=(99a_k+70b_k)\sqrt{2}-(140a_k+99b_k) \end{aligned}\] であり, $a_{k+1}=99a_k+70b_k$, $b_{k+1}=140a_k+99b_k$とおけばよい.

以上によって, 全ての自然数$k$に対して$(5\sqrt{2}-7)^{2k-1}=a_k\sqrt{2}-b_k$となるような自然数$a_k$, $b_k$があることがわかるが,
このとき$0\lt a_k\sqrt{2}-b_k\lt \dfrac{1}{10}$より$b_k\lt a_k\sqrt{2}\lt b_k+\dfrac{1}{10}$であるので,
$a_k\sqrt{2}$は整数部分が$b_k$で, 小数第1位は0である.

また任意の自然数$k$に対して$a_{k+1}\gt a_k$であるから, $n\sqrt{2}$の小数第1位が0になる自然数$n$が無数に存在することが示された. (終)

先ほどは小数部分を足していったときを考えたのですが,今度はかけた場合を考えています。
ただし1回かけるだけと$p-q\sqrt{2}$ ($p$, $q$は自然数)の形になってしまうので, 2回かけています.

ちなみに上の解法だとそのまま$5\sqrt{2}-7$どうしをかけましたが,
実際には正かつ1未満のものであればよいので,
たとえば$5\sqrt{2}-7$に$(\sqrt{2}-1)^2$を次々にかけていくのでも問題なく示せます.
最初から$p-q\sqrt{2}$型をかけるのでもよいですね($5\sqrt{2}-7$に$5-3\sqrt{2}$を次々にかけていくなど).

なおいずれの解法でも, 背理法,
すなわち条件に合う$n$が有限個しかないと仮定した場合, $n$の最大値が取れるはずで,
その$n$の最大値より大きな, 条件に合う$n$が作れて矛盾, という論法で証明可能です.

ただし, この場合には$n$の最大値をとれるために,
条件に合う$n$が本当に存在することを断っておく必要があることに注意してください.

たとえば,
「自然数$n$で, ある自然数$k$を用いて$n=\dfrac{2k+1}{2}$と書ける$n$が無数にある」
は偽命題ですが,
$n$の存在そのものを確認しないでこの論法を用いようとすると,

  • このような$n$の最大をとると, $n=\dfrac{2k+1}{2}$であるが,
    $n+1=\dfrac{2(k+1)+1}{2}>n$より矛盾,
    よって$n=\dfrac{2k+1}{2}$となる自然数$k$をとれるような自然数$n$は無数に存在する.

と言えてしまいます. もちろんそんな$n$は1つも存在しません.

つまり, 有限個のものの最大値・最小値をとる場合には,
そもそもそれが本当に1つでも存在することが言えないとならないということになります.

あとこの問題には「ペル方程式」$x^2-dy^2=\pm 1$ ($d$は整数) が絡んでいます.
本解がまさに$2x^2-y^2=1$の解を無数に与えてくれています.
この「ペル方程式」に絡んだ入試問題もたまに出題されるようなので,
興味があったら是非調べてみてください.

次回は理系第3問です。
文型の問題は1つ記事をはさんで第4問(理型第4問)を解説予定です。

それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ではまた。

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