2016年3月25日

【高校数学I,II】展開の工夫

皆さん、こんにちは! TomoKです。

前々回前回と展開公式を学習してきました。
今回は、展開公式を使って、
展開の工夫をすることについてお話ししたいと思っています。

それでは、今回の内容に入ります。



前回までの公式を忘れたという人は
よく記事を見返してね、
といいたいところですが、
それではあんまりだ、という人もいるかもしれませんので、
今回は今までの公式をすべてここに載せておきます。

展開の公式
(1) $m(x+y)=mx+my$
(2) $(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$
(3) $(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$
 (3') $(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$
(4) $(a+b)(a-b)=a^2-b^2$
(5) $(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd$
(6) $(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$
(7) $(a+b)^3=a^3+3a^{2}b+3ab^2+b^3$
 (7') $(a-b)^3=a^3-3a^{2}b+3ab^2-b^3$
(8) $(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3$
 (8') $(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3$

では、これらを念頭に置いて、今度こそ内容に入ります。


[1] 置き換えを利用する

同じ部分が2度以上出てくるときには、
その部分を置き換えることで、
展開が楽になることがあります。

例題を見てみましょう。

例題
EXQ1. 次の式を展開せよ。
 (1) $(x^2+3)(x^2-6)$  (2) $(x+y-1)(x+y+4)$
 (3) $(a+b+c)(a-b-c)$  

ではこれを解きましょう。

(1)は比較的楽です。
上のどの公式に似ているかと思えば一発。
2番目の公式です。
違っているのは、その$x$のところが$x^2$になっているところです。
したがって、$X=x^2$とおいてみますと、
$\quad (\textcolor{red}{x^2}+3)(\textcolor{red}{x^2}-6)=(\textcolor{red}{X}+3)(\textcolor{red}{X}-6)$
$=\textcolor{red}{X}^2-3\textcolor{red}{X}-18$
$=(\textcolor{red}{x^2})^2-3\textcolor{red}{x^2}-18$
$=\boldsymbol{x^4-3x^2-18}$
となります。
最後、$X$をもとの$x^2$に戻すのを忘れないでください。

続いて(2)です。
今度は、じっと見てみると、
$x+y$が前後で共通しているようです。
そこで、とりあえず$Y=x+y$と置き換えてみますと、、、
$\quad (\textcolor{green}{x+y}-1)(\textcolor{green}{x+y}+4)=(\textcolor{green}{Y}-1)(\textcolor{green}{Y}+4)$  ←公式2
$=\textcolor{green}{Y}^2+3\textcolor{green}{Y}-4$
$=(\textcolor{green}{x+y})^2+3(\textcolor{green}{x+y})-4$
$=\boldsymbol{x^2+2xy+y^2+3x+3y-4}$
となります。

最後の(3)ですが、
一見すると、共通なものがないように見えます。
しかし、左と右で、符号が変わっているものがあります。
bとcですね。
左は$b+c$  右は$-b-c=-(b+c)$
と考えると、$Z=b+c$とおけばよいことに気づきます。
すると、
$\quad (a+b+c)(a-b-c)=\{ a+(\textcolor{orangered}{b+c})\} \{ a-(\textcolor{orangered}{b+c})\}$
$=(a+\textcolor{orangered}{Z})(a-\textcolor{orangered}{Z})$  ←公式4
$=a^2-\textcolor{orangered}{Z}^2$
$=a^2-(\textcolor{orangered}{b+c})^2$
$=a^2-(b^2+2bc+c^2)$
$=\boldsymbol{a^2-b^2-2bc-c^2}$
となります。

$b+c$と$-b-c$(=$-(b+c)$)の組み合わせ、
$b-c$と$-b+c$(=$-(b-c)$)の組み合わせには
要注意です。

慣れてくると、
置き換えないで、公式にそのまま代入する感じで
できるようになります。

練習問題
Q1. 次の式を展開せよ。
 (1) $(3x^2+5x)^2$     (2) $(2x^2+x)(2x^2+x-2)$
 (3) $(x+2y+3)(x+2y-7)$     (4) $(a+2b-c)(4a-2b+c)$

Q2. $X=a+b$と置き換えることで、
  $(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$を証明せよ。

置き換えによる方法は、
展開に限らず、通常の計算にも応用できます。

例えば、
$(x+y+z)^2+(x+y-z)^2$を計算するときは、
前の項と後ろの項で$x+y$が共通していますから、
$\textcolor{red}{A=x+y}$とおいて、
$\quad (\textcolor{red}{x+y}+z)^2+(\textcolor{red}{x+y}-z)^2$
$=(\textcolor{red}{A}+z)^2+(\textcolor{red}{A}-z)^2$
$=\textcolor{red}{A}^2+2\textcolor{red}{A}z+z^2+\textcolor{red}{A}^2-2\textcolor{red}{A}z+z^2$
$=\textcolor{red}{A}^2+z^2$
$=(\textcolor{red}{x+y})^2+z^2$
$=x^2+2xy+y^2+z^2$
という感じです。

練習問題
Q3. 式 $(x^2+x+1)(x^2+x-3)+(x^2+x-1)(x^2+x+3)$を計算せよ。


[2] かける順番を工夫する

かけ算はどの順番からかけても行き着く答えは同じなので、
かける順番は個人の自由ですが、
どうせ自由な順番でかけられるなら、
その順番を工夫して、できるだけ楽にしたいですよね。

次の例題を見てみましょう。

例題
EXQ2. 次の式を展開せよ。
 (1) $(x^2+1)(x+1)(x-1)$  (2) $(x+1)^{2}(x-1)^{2}$
 (3) $(x+1)(x+3)(x+5)(x+7)$ 

(1)は、前のほうを先にかけてしまうと、
$\textcolor{purple}{(x^2+1)(x+1)}(x-1)=\textcolor{purple}{(x^3+x^2+x+1)}(x-1)$
となってしまい、
項が増えて、やる気を失います。

そうではなく、後ろのほうを先にかけると、
$(x^2+1)\textcolor{purple}{(x+1)(x-1)}=(x^2+1)\textcolor{purple}{(x^2-1)}$
となって、やりやすい2項×2項の形です。

あとは、$x^2$を1つの塊で公式4を使うわけですね。
(もちろん$X=x^2$と置き換えてやってもいいですよ!)
$(x^2+1)\textcolor{purple}{(x+1)(x-1)}=(x^2+1)\textcolor{purple}{(x^2-1)}$
$\phantom{(x^2+1)(x+1)(x-1)}=(x^2)^2-1=\boldsymbol{x^4-1}$

(2)も、2乗を先にやると、
項が3つの式2個の積なるので、
指数法則$a^{\textcolor{blue}{m}}b^{\textcolor{blue}{m}}=(ab)^{\textcolor{blue}{m}}$を使って
2乗するものを先にかけてから2乗します。
$\begin{align*}
(x+1)^{\textcolor{blue}{2}}(x-1)^{\textcolor{blue}{2}}&=\{(x+1)(x-1)\}^{\textcolor{blue}{2}}  ←公式2\\
&=(x^2-1)^2      ←x^{2}をひと塊とみて公式3'\\
&=(x^2)^2-2x^2+1\\
&=\boldsymbol{x^4-2x^2+1}
\end{align*}$

(3)のタイプの問題は、掛ける順序を考える問題として、
非常に多用されるネタです。
これは、うっかりすると普通にかけてしまいそうですね。

公式は2番を使わざるを得ないと思いますが、
"$x^2+(和)x+(積)$"という形ですよね。
そこでよくよく考えると、
"+1"と"+7", "+3"と"+5"というふうに
和が一緒になる2つの組が作れることがわかります。

そこで、同じ部分を作り出すべく、
$(x+1)$と$(x+7)$, $(x+3)$と$(x+5)$の2組に分けてかけてみると、
$\quad \green{(x+1)}\orange{(x+3)(x+5)}\green{(x+7)}\\
=\green{(x+1)(x+7)}\cdot \orange{(x+3)(x+5)}  ←公式2\\
=\green{(\red{x^2+8x}+7)}\orange{(\red{x^2+8x}+15)}  ←(x^2+8x)をひと塊として公式2\\
=(\red{x^2+8x})^2+22(\red{x^2+8x})+105  ←公式3\\
=(x^2)^2+2\cdot x^2 \cdot 8x^2+(8x)^2+22x^2+176x+105\\
=\boldsymbol{x^4+16x^3+86x^2+176x+105}$
となります。

このように、展開の場合は、項が増えるので、
見通しを立てながら展開することが
非常に重要になります。

練習問題
Q4. 次の式を計算せよ。
 (1) $(x-2)(x+2)(x^2+4)(x^4+16)$
 (2) $(x+3)(x-3)(x^2+3x+9)(x^2-3x+9)$
 (3) $(x+1)^{3}(x-1)^{3}$
 (4) $(x+2)(x+3)(x+4)(x+5)$
 (5) $(x-1)(x-2)(x+3)(x+4)$

いつも通り、各練習問題の解答は
この記事の最後にあります。

今日はレベルアップ問題もつけておくことにいたしましょう。
こちらもいつも通り今回は答えを出しませんので、
力試しと思って、じっくり取り組んでください。

レベルアップ問題
LUQ4. $(x+y+z)(x+y-z)(x-y+z)(x-y-z)$を展開せよ。

LUQ5. 次の式を計算せよ。
 (1) $(x+y+z)^2+(x+y-z)^2+(x-y+z)^2+(-x+y+z)^2$
 (2) $\begin{align*}
(x-2)(x-1)(x+1)&+(x-2)(x-1)(x+2)\\
&+(x-2)(x+1)(x+2)+(x-1)(x+1)(x+2)
\end{align*}$

と、いうことで、
ここまでが展開ですね。

次回からは因数分解です。
冒頭に掲げた8個(人によっては11個)の公式を
すべて正確に覚えておきましょう!

それでは今回はここまで。
少し長めでしたが、
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
ではまた!

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練習問題の答え

Q1. ※置き換えを省いた方法です。
    (2)以降は途中式に同じ形の式が出てくれば置き換え成功です。
 (1) $9x^4+30x^3+25x^2$

 (2) $(2x^2+x)^2-2(2x^2+x)=4x^4+4x^3+x^2-4x^2-2x$
   $\phantom{(2x^2+x)^2-2(2x^2+x)}=\underline{4x^4+4x^3-3x^2-2x}$

 (3) $(x+2y)^2-4(x+2y)-21=\underline{x^2+4xy+4y^2-4x-8y-21}$

 (4) $\{a+(2b-c)\}\{4a-(2b-c)\}=4a^2-3a(2b-c)-(2b-c)^2$
   $\phantom{\{a+(2b-c)\}\{4a-(2b-c)\}}=4a^2-6ab+3ac-(4b^2-4bc+c^2)$
   $\phantom{\{a+(2b-c)\}\{4a-(2b-c)\}}=\underline{4a^2-4b^2-c^2-6ab+4bc+3ca}$

Q2. [証明]
 $(a+b+c)^2=(X+c)^2=X^2+2Xc+c^2$
 $\phantom{(a+b+c)^2}=(a+b)^2+2(a+b)c+c^2$
 $\phantom{(a+b+c)^2}=a^2+2ab+b^2+2ac+2bc+c^2$
 $\phantom{(a+b+c)^2}=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$   (終)

Q3. $A=x^2+x$とおくと、
 $\quad (x^2+x+1)(x^2+x-3)+(x^2+x-1)(x^2+x+3)\\
=(A+1)(A-3)+(A-1)(A+3)\\
=(A^2-2A-3)+(A^2+2A-3)\\
=2A^2-6=2(x^2+x)^2-6\\
=2(x^4+2x^3+x^2)-6=\underline{2x^4+4x^3+2x^2-6}$

Q4. (1) $(x^2-4)(x^2+4)(x^4+16)=(x^4-16)(x^4+16)=\underline{x^8-256}$

 (2) $(x+3)(x^2-3x+9)\cdot (x-3)(x^2+3x+9)=(x^3+1)(x^3-1)=\underline{x^6-1}$

 (3) $\{(x+1)(x-1)\}^3=(x^2-1)^3=\underline{x^6-3x^4+3x^2-1}$

 (4) $(x+2)(x+5)\cdot (x+3)(x+4)=(x^2+7x+10)(x^2+7x+12)$
   $\phantom{(x+2)(x+5)\cdot (x+3)(x+4)}=(x^2+7x)^2+22(x^2+7x)+120$
   $\phantom{(x+2)(x+5)\cdot (x+3)(x+4)}=(x^4+14x^3+49x^2)+22x^2+154x+120$
   $\phantom{(x+2)(x+5)\cdot (x+3)(x+4)}=\underline{x^4+14x^3+71x^2+154x+120}$

 (5) $(x-1)(x+3)\cdot (x-2)(x+4)=(x^2+2x-3)(x^2+2x-8)$
   $\phantom{(x-1)(x+3)\cdot (x-2)(x+4)}=(x^2+2x)^2-11(x^2+2x)+24$
   $\phantom{(x-1)(x+3)\cdot (x-2)(x+4)}=(x^4+4x^3+4x^2)-11x^2-22x+24$
   $\phantom{(x-1)(x+3)\cdot (x-2)(x+4)}=\underline{x^4+4x^3-7x^2-22x+24}$

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