2019年1月27日

【第1回垂れ流し模試】第1問解説

皆さんこんにちは!
TomoKです。

今回から6回は、
前回ブログ記事でお知らせしたとおり、
私のtwitterの数学アカで行った
「第1回垂れ流し模試」の解説を行いたいと思います。

今回はその第1問を解説します。




第1問は
(1)極限, (2)整式の除法
を出題しました。

(1)の解法

三角関数の極限ですが、
$x$に仮に$0$を代入しますと, 分母も分子も$0$になることがすぐにわかります.
つまり$\dfrac{0}{0}$不定形です.

三角関数でよく使われるのは,
$\green{\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{\sin x}{x}=1}$
$\green{\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{1-\cos x}{x}=\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{1-\cos^2 x}{x(1+\cos{x})}=\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{\sin^2 x}{x(1+\cos{x})}=0}$
$\green{\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{\tan x}{x}=\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{\sin x}{x\cos x}=1}$
ですので, これが使えるように変形していくことを目指します.

まず、分母と分子は加法定理を使って計算できそうです。

分母:
$\begin{aligned}
1-2\cos \left(\dfrac{\pi}{3}-x\right)
&=1-2\left(\cos\dfrac{\pi}{3}\cos x+\sin\dfrac{\pi}{3}\sin x\right)\\
&=1-2\left(\dfrac{1}{2}\cos x+\dfrac{\sqrt{3}}{2}\sin x\right)\\
&=1-\cos x+\sqrt{3}\sin x
\end{aligned}$

分子:
$\begin{aligned}
1-\tan \left(\dfrac{\pi}{4}-x\right)
&=1-\dfrac{\tan\dfrac{\pi}{4}+\tan x}{1-\tan\dfrac{\pi}{4}\tan x}\\
&=1-\dfrac{1+\tan x}{1-\tan x}=\dfrac{(1-\tan x)-(1+\tan x)}{1-\tan x}\\
&=-\dfrac{2\tan x}{1-\tan x}
\end{aligned}$

ここで上の緑で書いた3つの式をにらむと、
分母を$x$でわると,
$\begin{aligned}
\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{1-\cos x+\sqrt{3}\sin x}{x}
&=\dlim_{x\rightarrow 0}\left(\dfrac{1-\cos x}{x}+\sqrt{3}\cdot \dfrac{\sin x}{x}\right)\\
&=0+\sqrt{3}\cdot 1=\sqrt{3}
\end{aligned}$
と, $0$ではない極限に行きつきます.

同じように, 分子を$x$でわると
$\dlim_{x\rightarrow 0}\left(-\dfrac{2\tan x}{x(1-\tan x)}\right)
=-2\cdot \dfrac{1}{1-0}=-2$

となります。
これで解決しそうです。

結局, 求める極限値は,
$\begin{aligned}
\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{1-\tan(\frac{\pi}{4}-x)}{1-2\cos(\frac{\pi}{3}-x)}
&=\dlim_{x\rightarrow 0}\left\{\dfrac{1}{1-\cos x+\sqrt{3}\sin x}
\cdot \left(-\dfrac{2\tan x}{1-\tan x}\right)\right\}\\
&=\dlim_{x\rightarrow 0}\left\{\dfrac{1}{\frac{1-\cos x+\sqrt{3}\sin x}{x}}
\cdot \left(-\dfrac{2\tan x}{x(1-\tan x)}\right)\right\}\\
&=\dfrac{1}{\sqrt{3}}\cdot (-2)=\bold{-\dfrac{2\sqrt{3}}{3}}
\end{aligned}$
となります。

[別解]

さて、以上の方法は加法定理を利用して基本の極限を用いる方法ですが、
別解として微分係数の定義を利用する方法もあります.

$f(x)=\tan\left(\dfrac{\pi}{4}-x\right)$, $g(x)=2\cos\left(\dfrac{\pi}{3}-x\right)$
とおきますと, $f(0)=1$, $g(0)=1$となりますから,
$\begin{aligned}
\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{1-\tan(\frac{\pi}{4}-x)}{1-2\cos(\frac{\pi}{3}-x)}
&=\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{\tan(\frac{\pi}{4}-x)-1}{2\cos(\frac{\pi}{3}-x)-1}\\
&=\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{f(x)-f(0)}{g(x)-g(0)}
\end{aligned}$
です。

ところで, f(x)は$x=0$で微分可能で,
$\red{f'(0)=\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{f(x)-f(0)}{x}}$
でしたから(gも同様),
$g'(0)\neq 0$であれば、
$\begin{aligned}
\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{f(x)-f(0)}{g(x)-g(0)}
&=\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{\frac{f(x)-f(0)}{x}}{\frac{g(x)-g(0)}{x}}\\
&=\dfrac{f'(0)}{g'(0)}
\end{aligned}$
となります.

$f'(x)=-\dfrac{1}{\cos^2(\frac{\pi}{4}-x)}$, $g'(x)=2\sin\left(\dfrac{\pi}{3}-x\right)$なので,
$f'(0)=-\dfrac{1}{\cos^2\frac{\pi}{4}}=-2$, $g'(0)=2\sin \dfrac{\pi}{3}=\sqrt{3}$です。

よって、求める極限値は
$\dlim_{x\rightarrow 0}\dfrac{1-\tan(\frac{\pi}{4}-x)}{1-2\cos(\frac{\pi}{3}-x)}
=\dfrac{f'(0)}{g'(0)}=-\dfrac{2}{\sqrt{3}}=\underline{-\dfrac{2\sqrt{3}}{3}}$
となります。

いずれにしても、自分のよく知っている形になるように変形することは、
特に極限の計算においては大事なことだと思います。

(2)の解法

整式の割り算ですが、
わる式にもわられる式にも文字$n$が入っているので、
直接筆算などで割ることができません。

そのような時に効く手段の1つとして、
$A=BQ+R$の形をうまく作る
ということがあげられます。

今回わる式は$x^2-2nx+n^2=(x-n)^2$ですが、
まず、わられる式$x^n$を1度$x-n$でわって、
その時の商をさらに$x-n$でわることで、
うまく$x^2=(x-n)^2Q+R$の形を作れるのではないか、
と考えていきます。

剰余の定理によって、
$x^n$を$x-n$でわった余りは$n^n$になるので、
そのときの商を$Q_1(x)$とおけば、
$x^n=(x-n)Q_1(x)+n^n$と書けます。
これは変形すると、$x^n-n^n=(x-n)Q_1(x)$ (…①)
となります。

ここで、よく使われる恒等式
$\red{a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}b^{0}+a^{n-2}b+\cdots +a^{0}b^{n-1})}$
を使うと、
$(x-n)(x^{n-1}+nx^{n-2}+\cdots +n^{n-1})=(x-n)Q_1(x)$
両辺を$x-n$で割れば、
$x^{n-1}+nx^{n-2}+\cdots +n^{n-1}=Q_1(x)$
となります。

(注意ですが、上の赤い恒等式で、$a^0$とか$b^0$は1とみなしています。
また、そのまま使えるのは$n\geqq 2$ですが、
$n=1$のときに2つ目のかっこが$a^{0}b^{0}=1$のみになると考えると
$n=1$でもこの式は成り立つと考えられます。
が、どうしても気になる方は、問題の$n=1$のときを別途確認すればよいでしょう。)

さて、さらにこの$Q_1(x)$を$x-n$で割りますと、
再び剰余の定理より、その余りは
$Q_1(n)=n^{n-1}+nn^{n-2}+\cdots +n^{n-1}=nn^{n-1}=n^n$
となります。
したがって、このときの商を$Q_2(x)$とおけば、
$Q_1(x)=(x-n)Q_2(x)+n^n$
とおけます。

この式を①に代入すると、
$\begin{aligned}
x^n&=(x-n)\{(x-n)Q_2(x)+n^n\}+n^n\\
&=(x-n)^2Q_2(x)+n^n(x-n)+n^n\\
&=(x-n)^2Q_2(x)+n^{n}x-n^{n+1}+n^n
\end{aligned}$
となり、
$n^{n}x-n^{n+1}+n^n$がわる式$(x-n)^2$よりも次数が低いことから、
$x^n$を$(x-n)^2$でわったときの余りは
$\bold{n^{n}x-n^{n+1}+n^n}$であることがわかります。

今回はわる式が$(x-n)^2$というように累乗が絡んでいるので、
2段階に$A=BQ+R$の形を構えることで、
最終的に$(x-n)^2$でわった時と同等の式が作り出せるわけですね。

[別解1]

で、これにも微分による別解があります。
これもわる式に累乗が絡む場合に有効な解法です。

この解法では、初めから$A=BQ+R$の形を作ってしまいます。
今回はわる式が$x^2-2nx+n^2=(x-n)^2$で、商を$Q(x)$,
また2次式で割るため、余りは定数か1次なので、
その余りを$ax+b$ ($a, b$は定数)とおくと、
$x^n=(x-n)^2Q(x)+ax+b$  (…(*))
と書けます。

ここで、この式に$x=n$を代入すると、
$n^n=an+b$  (…(**))
となります。

次に、(*)の式の両辺を$x$で微分すると、
$nx^{n-1}=2(x-n)Q(x)+(x-n)^2Q'(x)+a$
で、ここにも$x=n$を代入すると、
$nn^{n-1}=a$ すなわち $a=n^n$ となります。
これを(**)に代入すれば、
$n^n=n^{n+1}+b$ すなわち $b=-n^{n+1}+n^n$ となります。

以上より、$x^n$を$x^2-2nx+n^2$でわった余りは、
$\underline{n^nx-n^{n+1}+n^n}$になります。

[別解2]

もう1つ別解を紹介しましょう。
2項定理をうまく利用する解法です。

$x=(x-n)+n$と考えて、強引に$x^n$を二項定理で展開します。

$\begin{aligned}
x^n&=\{(x-n)+n\}^n\\
&=\Comb{n}{0}(x-n)^n+\Comb{n}{1}n(x-n)^{n-1}+\cdots +\Comb{n}{n-1}n^{n-1}(x-n)+\Comb{n}{n}n^n
\end{aligned}$

ここで、$n\geqq 2$ならば、
最後の2項以外から$n^2-2nx+n^2=(x-n)^2$がくくり出せて、

$\begin{aligned}
&x^n\\
=&(x-n)^2\{\Comb{n}{0}(x-n)^{n-2}+\Comb{n}{1}n(x-n)^{n-3}+\cdots +\Comb{n}{n-2}n^{n-2}\}\\
&\hspace{100mm}+\Comb{n}{n-1}n^{n-1}(x-n)+\Comb{n}{n}n^n\\
=&(x-n)^2\{\Comb{n}{0}(x-n)^{n-2}+\Comb{n}{1}n(x-n)^{n-3}+\cdots +\Comb{n}{n-2}n^{n-2}\}+n^{n}(x-n)+n^n
\end{aligned}$

となります。
最後に残った2項は$n^{n}(x-n)+n^n=n^nx-n^{n+1}+n^n$ですが、
これはわる式$(x-n)^2$よりも次数が低いので、
$n\geqq 2$のとき、$x^n$を$x^2-2nx+n^2$でわった時の余りは
$n^nx-n^{n+1}+n^n$だとわかります。

$n=1$のときは$x$を$x^2-2x+1$でわった余りは
$x(=1^1x-1^{1+1}+1)$ですから、
結果的にすべての自然数で、$x^n$を$x^2-2nx+n^2$でわった時の余りは
$\underline{n^nx-n^{n+1}+n^n}$となります。

以上が第1問の解説でした。

極限やわり算の余りを単に求める問題は
入試ではあまりでないかもしれません。

ただ、
極限に関しては、関数の挙動を調べるときに極限を調べることがあるので、
おろそかにできないところでしょう。

また、多項式の割り算も一部の大学では依然として出題されたり、
整式の性質として証明問題が出たりすることがありますから、
出題歴のある大学を中心にチェックが必要かもしれません。

ということで、
次の数学の記事では第2問の解説をやる予定ですので、
お楽しみに。

ここまでお読みくださってありがとうございました。
ではまた!

0 件のコメント:

コメントを投稿