2021年1月18日

【第3回垂れ流し数学模試】第1問解説

皆さんこんにちは!
TomoKです。

2021年も始まったということで、
あけましておめでとうございます!

今年も、引き続きブログは低更新ですが、
twitterでのコンテンツを中心にご覧いただくことになると思います。
よろしくお願いいたします!

さて、今日から6回にわたり、
1月11日(月)まで開催された 第3回垂れ流し数学模試 の解説記事
を書いていこうと思います。

まずは、今回企画に参加してくださった方、
twitterでRTやリプをしてくれた方々、ご覧いただいた方に感謝申し上げます。
本当にありがとうございました!

今回は、全6問すべてを解いて送っていただいた方がいらっしゃいました。
もちろん過去2回同様、一部の問題のみを送っていただいた方もいらっしゃいました。
こうやって興味を持っていただけるのはすごくありがたい限りです。

解答期間終了したので、今回の問題は今後、
DMだけでなくリプ解答可能となり、通常問題同様にして答案受付します。
「こんな答案ではどうか?」というものがあればぜひ送ってください。

...前置きが長くなりましたので、そろそろ解説のほうに移りましょうか。

今回は第1問の解説をここから書いていきます。


第1問 (1)

問題

極限値 $\dlim_{x\to 0}{\dfrac{x}{\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}-\sqrt{x+9}}}$ が存在するならば, それを求めよ.

第1問(1)は極限の問題です。
分母が√の3つの和になっているのはあまり見かけないかもしれませんが、
それは頑張って有理化すればいいだけのことなので、
計算ミスさえしなければ、さほど難しい問題ではないと思います。

解答のために考えること

$x\to 0$のとき、分母も分子も0に収束します(つまり$\dfrac{0}{0}$の不定形)。
上記の通り、分母の有理化をして不定形を解消できないかやってみます。
または、下の別解のように、分母と分子を入れ替えて導関数の定義を利用することもできます。

解答

$x>-1$かつ$x\neq 0$の範囲で、

 $\dfrac{x}{\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}-\sqrt{x+9}}$
$=\dfrac{x(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})}{(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4})^2-(\sqrt{x+9})^2}$
$=\dfrac{x(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})}{(\sqrt{x+1})^2+2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4}+(\sqrt{x+4})^2-(\sqrt{x+9})^2}$
$=\dfrac{x(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})}{x+1+2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4}+x+5-(x+9)}$
$=\dfrac{x(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})}{x-4+2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4}}$
$=\dfrac{x(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})(x-4-2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4})}{(x-4)^2-(2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4})^2}$
$=\dfrac{x(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})(x-4-2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4})}{(x-4)^2-4(x+1)(x+4)}$
$=\dfrac{x(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})(x-4-2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4})}{-3x^2-28x}$
$=-\dfrac{(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})(x-4-2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4})}{3x+28}$

よって、

 $\dlim_{x\to 0}{\dfrac{x}{\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}-\sqrt{x+9}}}$
$=-\dlim_{x\to 0}{\dfrac{(\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}+\sqrt{x+9})(x-4-2\sqrt{x+1}\sqrt{x+4})}{3x+28}}$
$=-\dfrac{(1+2+3)(-4-2\cdot 1\cdot 2)}{28}=\bold{\dfrac{12}{7}}$

やや計算が面倒ですが、落ち着いて計算すれば問題なくいけます。

別解は、上述したとおりに、分母と分子を入れ替えたものの極限を導関数の定義を利用して求めていきます。

別解

$\dlim_{x\to 0}{\dfrac{\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}-\sqrt{x+9}}{x}}$を考えるために,
$x>-1$で定義できる関数$f(x)=\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}-\sqrt{x+9}$を考える.

$x$による導関数は、$f'(x)=\dfrac{1}{2\sqrt{(x+1)}}+\dfrac{1}{2\sqrt{(x+4)}}-\dfrac{1}{2\sqrt{(x+9)}}$
また、$f(0)=1+2-3=0$

よって、

$\begin{aligned} \dlim_{x\to 0}{\dfrac{\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}-\sqrt{x+9}}{x}}&=\dlim_{x\to 0}{\dfrac{f(x)-f(0)}{x-0}}\\[10pt] &=f'(0)=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{6}\\[10pt] &=\dfrac{7}{12} \end{aligned}$

したがって,

$\dlim_{x\to 0}{\dfrac{x}{\sqrt{x+1}+\sqrt{x+4}-\sqrt{x+9}}}=\dfrac{1}{\frac{7}{12}}=\bold{\dfrac{12}{7}}$

不定形の極限は、別解のように導関数を用いて求めるのが割と万能だったりします。
もっとも、単なる極限を求めさせる問題もそんなに多くはないですが、、、

そういうわけで、1つの解き方だけでなく、他のアプローチも学んで解けるようにしておくと、
いざというときの助けになると思います。


第1問 (2)

問題

$n$を自然数とする.
1以上$2n+1$以下の自然数から互いに異なる3個の自然数を無作為に選ぶとき,
それらを小さい順に並べかえて等差数列ができる確率を, $n$を用いて表せ.

第1問(2)は確率です。

過去2回では確率を第6問で出題しましたが、
今回は直前までいい問題が思いつかず、
少し簡単めな問題で第1問のほうに移動しました。

とはいえ、3つの自然数が等差数列を成す確率なので、単純な計算で終わらないようにはしたつもりです。
つまり、そのような3つの自然数の組をどう数えるかがポイントになります。

なお、選ぶ自然数の最大値は今回$2n+1$、すなわち3以上の奇数でしたが、
この最大値を4以上の偶数としても同じ要領で解くことができます。
これを合わせて、「3以上の自然数」としたものが、2005年の京大で出題されているようです。
奇遇デシタネ...

解答のために考えること

3つの自然数$a_1$, $a_2$, $a_3$で、$a_1<a_2<a_3\leqq 2n+1$かつこの順で等差数列を成すようなものの総数を$T_n$とおいて、
$T_n$を$n$で表します。
そのような$a_1$, $a_2$, $a_3$のうち、$a_3\leqq 2n-1=2(n-1)+1$であるものは$T_{n-1}$個ありますので、
$T_n$を$T_{n-1}$を用いて表せます。つまり$T_{n}$の漸化式が出来上がることになります。

別解の考え方を紹介します。
等差数列となる3数$(a_1, a_2, a_3)$について、$a_1$, $a_2$, $a_3$のどれか2つが決まれば、
残りの1つも自動的に決まります。
したがって、例えば$a_1$, $a_2$, $a_3$が条件を満たすような$a_1$, $a_3$の決め方を数えれば、
3数が等差数列を成す場合の数を数えることができます。
このとき特に、$a_1$と$a_3$は偶奇が一致しますので(下記別解参照)、
結果的に$1$以上$2n+1$以下の偶数全体あるいは奇数全体それぞれから2つの自然数を選ぶ場合の数を足せば、
条件を満たす場合の数が得られます。

注意点として、解き方によっては、$n=1$を別記しないと
$\Comb{n}{r}$や$\Sigma$など記号的に問題が生じますので
より正確な解答を目指す場合には気を付けましょう。
(本当はこちらで$n\geqq 2$の場合に制限して出題したほうがよかったのですが、、、
というわけで今回答案拝見した方にはこの点での指摘をしていません)

解答

3つの自然数$a_1$, $a_2$, $a_3$で、$a_1<a_2<a_3\leqq 2n+1$かつこの順で等差数列を成すようなものの総数を$T_n$とする.

$n=1$のとき、条件を満たす3数は$a_1=1$, $a_2=2$, $a_3=3$のみなので、$T_1=1$

$n\geqq 2$の場合を考える.
このうち$a_3\leqq 2n-1(=2(n-1)+1)$の場合は$A_{n-1}$通りあり、

・$a_3=2n$の場合は
 $(a_1, a_2, a_3)=(2, n+1, 2n), (4, n+2, 2n), \cdots , (2n-2, 2n-1, 2n)$
 の$(n-1)$通り

・$a_3=2n+1$の場合は
 $(a_1, a_2, a_3)=(1, n+1, 2n+1), (3, n+2, 2n), \cdots , (2n-1, 2n, 2n+1)$
 の$n$通り

よって、$T_n=T_{n-1}+(n-1)+n=T_{n-1}+2n+1$
したがって、$T_n-T_{n-1}=2n+1$

ゆえに、$n\geqq 2$のとき、
$\begin{aligned} T_n&=T_1+\dsum_{k=1}^{n-1}{(2k+1)}\\[10px] &=1+2\cdot \dfrac{(n-1)n}{2}+(n-1)\\[10px] &=1+n^2-n+n-1=n^2 \end{aligned}$

$n=1$のときは$T_1=1=1^2$だから、結局すべての自然数$n$に対して
\[T_n=n^2\]
すべての3数の選び方は$\Comb{2n+1}{3}$だから、求める確率は、
\[\dfrac{T_n}{\Comb{2n+1}{3}}=\dfrac{n^2}{\frac{(2n+1)\cdot 2n\cdot (2n-1)}{3\cdot 2\cdot 1}}=\bold{\dfrac{3n}{(2n+1)(2n-1)}}\]

今回の問題の場合、条件を満たす場合の数を$n$を用いて表すのですが、
$n-1$の場合の数を使って$n$の場合の数を表せるので、
それを漸化式として解くことができればよいわけですね。

別解

$n=1$の場合、すべての3つの自然数の選び方は$(1, 2, 3)$のみで、
この順に公差1の等差数列となるから、その確率は$1$。

$n\geqq 2$の場合を考える。 3つの自然数$a_1$, $a_2$, $a_3$がこの順で等差数列を満たす場合、
$a_3-a_2=a_2-a_1$より$a_3+a_1=2a_n$だから、$a_1$と$a_3$の偶奇は一致する。
逆に、$a_1$と$a_3$の偶奇が一致すれば、 $a_2=\dfrac{a_1+a_3}{2}$は自然数となり、$a_1$, $a_2$, $a_3$はこの順で等差数列となる。

したがって、3数$a_1$, $a_2$, $a_3$が$a_1<a_2<a_3\leqq 2n+1$かつこの順で等差数列を成すような場合の数は、

・$2$以上$2n$以下の$n$個の偶数から2つの異なる自然数を選ぶ場合の数
・$1$以上$2n+1$以下の$(n+1)$個の奇数から2つの異なる自然数を選ぶ場合の数

の2つの場合の数の和に等しいから、$a_1$, $a_2$, $a_3$を小さい順に並べて等差数列となる確率は、
\[\dfrac{\Comb{n}{2}+\Comb{n+1}{2}}{\Comb{2n+1}{3}}=\dfrac{\frac{(n-1)n}{2}+\frac{n(n+1)}{2}}{\frac{(2n+1)\cdot 2n\cdot (2n-1)}{3\cdot 2\cdot 1}}=\dfrac{3n}{(2n+1)(2n-1)}\]
$n=1$のときの確率は$1=\dfrac{3\cdot 1}{(2\cdot 1+1)(2\cdot 1-1)}$であるから、
すべての自然数$n$に対し、求める確率は、$\bold{\dfrac{3n}{(2n+1)(2n-1)}}$

このほかにも、初項と交差が決まれば等差数列が決まることを用いて、
ありうる初項と交差のとり方の総数を数えて求めている方もいました。

このように、いくつかのもののうち一部の選び方に着目して求めることができれば、
効率よく場合の数を求めることができますね。

では、今回の記事はここまでです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ではまた。

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