前回は2変数x,yの対称式を考えましたが、
今日は似た話を3変数でやります。
3変数x,y,zを含む整式においては、
x,y,zのうちどの2つを入れ替えても等しくなるようなものを、
x,y,zの対称式といいます。
実はx,y,zのときも基本対称式があって、それらは
3つ全部の和 \orange{s=x+y+z}
3つのうち2つを選んだ積の和 \green{t=xy+yz+zx}
3つ全部の積 \purple{u=xyz}
の3つです。
x,y,zの3変数の対称式のときも、基本対称式のみで表すことができることが知られています。
(ただし、実際に表すのは2変数のときより難しいです。)
例えば、
x^2+y^2+z^2はx,y,zの対称式ですね。
これは前回と同様、x+y+zを2乗する方針で行けます。
展開の公式の(6)より
(\orange{x+y+z})^2=x^2+y^2+z^2+2xy+2yz+2zx=x^2+y^2+z^2+2(\green{xy+yz+zx})
となるので、
x^2+y^2+z^2=(\orange{x+y+z})^2-2(\green{xy+yz+zx})={\orange{s}}^2-2\green{t}
となります。
2乗はいいんですが、3乗はどうでしょう。
x^3+y^3+z^3はx,y,zの対称式ですが、
(x+y+z)^3を計算するのは大変です。
展開の公式や因数分解の公式で近い形はありませんでしたか?
...実はそれが、因数分解の公式(9)でした!
x^3+y^3+z^3-3xyz=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)
この公式を知っていると、非常に楽です。
これを使うとすると、x^2+y^2+z^2の結果は上でできているし、
-xy-yz-zx=-(\green{xy+yz+zx})ですから、
\begin{align*} x^3+y^3+z^3-3\purple{xyz}&=(\orange{x+y+z})\{x^2+y^2+z^2-(\green{xy+yz+zx})\}\\ &=\orange{s}({\orange{s}}^2-2\green{t}-\green{t})\\ &=\orange{s}({\orange{s}}^2-3\green{t}) \end{align*}
となるので、
x^3+y^3+z^3=\orange{s}({\orange{s}}^2-3\green{t})+3\purple{u}
となります。
この公式9は3文字の対称式がかかわるときにちょくちょく顔を出します。
今度はx^4+y^4+z^4です。これも難しいことになりますが、
とりあえず、さっき求めたx^2+y^2+z^2を2乗してみますか。
さっきも出てきた公式6より、
(x^2+y^2+z^2)^2=x^4+y^4+z^4+2(x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2})
したがって、
x^4+y^4+z^4=(x^2+y^2+z^2)^2-2(x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2})\quad \cdots ①
となりますね。
それゆえ、x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}を基本対称式で表すことになります。
このx^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}は、\green{xy+yz+zx}を2乗すると項として出てきます。
再び公式6より、
\begin{align*} (\green{xy+yz+zx})^2&=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+2(xy\cdot yz+yz\cdot zx+zx\cdot xy)\\ &=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+2(xy^{2}z+xyz^{2}+x^{2}yz) \end{align*}
となります。
ここで、よく見ると最後の( )はxyzでくくれて、
(\green{xy+yz+zx})^2=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+2\purple{xyz}(\orange{x+y+z})
となります。ゆえ、
\begin{align*} x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}&=(\green{xy+yz+zx})^2-2\purple{xyz}(\orange{x+y+z})\\ &={\green{t}}^2-2\orange{s}\purple{u} \end{align*}
となります。
これと、上で出したx^2+y^2+z^2={\orange{s}}^2-2\green{t}を①に代入すると、
\begin{align*} x^4+y^4+z^4&=({\orange{s}}^2-2\green{t})^2-2({\green{t}}^2-2\orange{s}\purple{u})\\ &={\orange{s}}^4-4{\orange{s}}^{2}\green{t}+4{\green{t}}^2-2({\green{t}}^2-2\orange{s}\purple{u})\\ &={\orange{s}}^4-4{\orange{s}}^{2}\green{t}+2{\green{t}}^2+4\orange{s}\purple{u} \end{align*}
となります。ずいぶん複雑ですね。
でも、「2乗」が項で出てくるときに、実際に2乗して、
邪魔な項を引くという操作をしているということは
頭に入れておいてください。
実際はs,t,uの値がわかっている状態でこのような操作をしていきます。
例題
EXQ1. 実数x,y,zが\orange{x+y+z=1}, \green{xy+yz+zx=-3}, \purple{xyz=2}をみたすとき、次の式の値を求めよ。
EXQ1. 実数x,y,zが\orange{x+y+z=1}, \green{xy+yz+zx=-3}, \purple{xyz=2}をみたすとき、次の式の値を求めよ。
(1) x^2+y^2+z^2 (2) x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2} (3) x^4+y^4+z^4
(4) \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}
(4) \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}
(1)はx^2+y^2+z^2が(\orange{x+y+z})^2の展開式の中に出てきます。
(\orange{x+y+z})^2=x^2+y^2+z^2+2(\green{xy+yz+zx})ですから、値の代入で、
{\orange{1}}^2=x^2+y^2+z^2+2\cdot (\green{-3}) すなわち 1=x^2+y^2+z^2-6 となります。
よって、x^2+y^2+z^2=1+6=\bold{7}です。
(2)ですが、今度、x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}は(\green{xy+yz+zx})^2の展開式の中に出てきますよね。
\begin{align*} (\green{xy+yz+zx})^2&=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+2(xy\cdot yz+yz\cdot zx+zx\cdot xy)\\ &=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+2(xy^{2}z+xyz^{2}+x^{2}yz)\\ &=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+2\purple{xyz}(\orange{x+y+z}) \end{align*}
となるので、ここに値の代入をします。
(\green{-3})^2=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+2\cdot \purple{2}\cdot \orange{1}
すなわち 9=x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}+4
よって、x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2}=9-4=\bold{5}となります。
(3)は、これもx^4+y^4+z^4が(x^2+y^2+z^2)^2の展開式の中に現れることを使いますね。
(x^2+y^2+z^2)^2=x^4+y^4+z^4+2(x^{2}y^{2}+y^{2}z^{2}+z^{2}x^{2})
ここに(1)と(2)の結果を代入すれば、
7^2=x^4+y^4+z^4+2\cdot 5 すなわち 49=x^4+y^4+z^4+10 となるので、
x^4+y^4+z^4=49-10=\bold{39} となります。
(4)ですが、これは通分して計算してみましょう。
\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}=\dfrac{yz}{xyz}+\dfrac{zx}{xyz}+\dfrac{xy}{xyz}=\dfrac{\green{xy+yz+zx}}{\purple{xyz}}=\dfrac{\green{-3}}{\purple{2}}=\bold{-\dfrac{3}{2}}
となります。
練習問題
Q1. 実数x,y,zがx+y+z=-3, xy+yz+zx=-1, xyz=4のとき、次の式の値を求めよ。 [解答]
(1) x^2+y^2+z^2 (2) x^3+y^3+z^3 (3) (x+1)(y+1)(z+1)
(4) \dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{yz}+\dfrac{1}{zx} (5) \dfrac{z-1}{xy}+\dfrac{x-1}{yz}+\dfrac{y-1}{zx}
Q1. 実数x,y,zがx+y+z=-3, xy+yz+zx=-1, xyz=4のとき、次の式の値を求めよ。 [解答]
(1) x^2+y^2+z^2 (2) x^3+y^3+z^3 (3) (x+1)(y+1)(z+1)
(4) \dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{yz}+\dfrac{1}{zx} (5) \dfrac{z-1}{xy}+\dfrac{x-1}{yz}+\dfrac{y-1}{zx}
と、いうわけで、
3月から始めた「数と式の扱い」の部分は今日でおしまいです。
ここまで学んだことが、今後いろんなところで出てくるはずです。
しっかり復習して、今後の数学の勉強に役立ててください。
次回の数学の記事からは「集合と論理」の部分に入ります。
ここも数学を考える上では非常に核となる部分です。
しかし高校数学らしいといえばらしいところで、
少し話が難しい、と思うところがあるかもしれません。
でも、いっしょに取り組んでいきながら、
一つ一つ理解していきましょう。
では、今回はここまでです。
お読みいただきありがとうございます。
ではまた!