今日は、式の値を求めるための工夫について考えます。
式の値を求める工夫の一つに「対称式の利用」があります。
x,yを入れ替えても、式として変わらないような整式を、
x,yの対称式と呼びます。
例えば、$x^2+y^2$はxとyを入れ替えると$y^2+x^2$であり、これは$x^2+y^2$に等しいので、
$x^2+y^2$は対称式になります。
実は、x,yの対称式は、和$x+y$と積$xy$のみで表すことができることが知られています。
この$x+y$と$xy$は、もっとも簡単なx,yの対称式なので、基本対称式と呼ばれます。
例えば、今の$x^2+y^2$を$\orange{s=x+y}$と$\green{t=xy}$だけで表すとしましょう。
まず2乗が出ているので、ためしに$\orange{x+y}$を2乗すると、
$(\orange{x+y})^2=x^2+2\green{xy}+y^2$
となります。右辺に$x^2+y^2$が出てくるので、それ以外のものを移項すると、
$(\orange{x+y})^2-2\green{xy}=x^2+y^2$
となりますね。このことから、
$x^2+y^2=(\orange{x+y})^2-2\green{xy}=\orange{s}^2-2\green{t}$
となることがわかり、対称式$x^2+y^2$は確かに基本対称式$\orange{s=x+y}$と$\green{t=xy}$だけで表せることがわかりました。
練習問題
Q1. 次のx, yの整式が対称式であることを確認せよ。
また、$s=x+y, t=xy$として、次のx,yの整式をs,tで表せ。 [解答]
(1) $(x-y)^2$ (2) $x^3+y^3$ (3) $x^4+y^4$ (4) $(x^2-y)(x-y^2)$
Q1. 次のx, yの整式が対称式であることを確認せよ。
また、$s=x+y, t=xy$として、次のx,yの整式をs,tで表せ。 [解答]
(1) $(x-y)^2$ (2) $x^3+y^3$ (3) $x^4+y^4$ (4) $(x^2-y)(x-y^2)$
さて、x,yの対称式の値は、結局、$\orange{x+y}$と$\green{xy}$の値がわかればいいということになります。
例題
EXQ1. $x=\sqrt{2}+1, y=\sqrt{2}-1$のとき、次の式の値を求めよ。
EXQ1. $x=\sqrt{2}+1, y=\sqrt{2}-1$のとき、次の式の値を求めよ。
(1) $x+y$ (2) $xy$ (3) $x^2+y^2$ (4) $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}$ (5) $\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}$
(1)と(2)は次のようになるのはいいと思います。
$\orange{x+y}=(\sqrt{2}+1)+(\sqrt{2}-1)=\orange{\bold{2\sqrt{2}}}$
$\green{xy}=(\sqrt{2}+1)(\sqrt{2}-1)=(\sqrt{2})^2-1^2=2-1=\green{\bold{1}}$
さて、(3)はすぐに対称式だとわかります。
先ほどの結果から、$x^2+y^2=(\orange{x+y})^2-2\green{xy}$なので、
$x^2+y^2=(\orange{2\sqrt{2}})^2-2\cdot \green{1}=8-2=\bold{6}$
となります。
(4),(5)も、整式ではないので対称式と呼ぶのは正確ではありませんが、
やはりxとyを入れ替えても等しい式になります。
(4)の式を、ためしに通分して計算しましょう。
$\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}=\dfrac{\red{y}}{x\red{y}}+\dfrac{\blue{x}}{\blue{x}y}=\dfrac{\orange{x+y}}{\green{xy}}$
おっ! $\orange{x+y}$と$\green{xy}$が出てきましたねえ。ならばあとは代入するだけ。
$\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}=\dfrac{\orange{x+y}}{\green{xy}}=\dfrac{\orange{2\sqrt{2}}}{\green{1}}=\bold{2\sqrt{2}}$
ですね。
(5)も同様に、通分して計算しましょう。
$\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}=\dfrac{y\cdot \red{y}}{x\red{y}}+\dfrac{x\cdot \blue{x}}{\blue{x}y}=\dfrac{x^2+y^2}{\green{xy}}$
となります。
ここで、$\green{xy}$は基本対称式です。また$x^2+y^2$は対称式ですから、
$\orange{x+y}$と$\green{xy}$で表していけばいいのですが、
幸運にも(3)で$x^2+y^2=6$と出ていますから、それを使いましょう。
すると、
$\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}=\dfrac{x^2+y^2}{\green{xy}}=\dfrac{6}{\green{1}}=\bold{6}$
となります。
分数型の式であっても、x,yを入れ替えて等しくなるなら、
やはり$\orange{x+y}$と$\green{xy}$を使って表せるわけですね。
練習問題
Q2. $x=1+2\sqrt{2}, y=1-2\sqrt{2}$のとき、次の式の値を求めよ。 [解答]
(1) $x^2+y^2$ (2) $x^3+y^3$ (3) $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}$ (4) $\left(\dfrac{y}{x}-1\right) \left(\dfrac{x}{y}-1\right)$
Q3. 実数$a, b$が$a+b=4, ab=-1$を満たすとき、次の式の値を求めよ。 [解答]
(1) $a^2+b^2$ (2) $(a-b)^2$ (3) $\dfrac{b}{a}+\dfrac{a}{b}$ (4) $\dfrac{b}{a^2}+\dfrac{a}{b^2}$
Q2. $x=1+2\sqrt{2}, y=1-2\sqrt{2}$のとき、次の式の値を求めよ。 [解答]
(1) $x^2+y^2$ (2) $x^3+y^3$ (3) $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}$ (4) $\left(\dfrac{y}{x}-1\right) \left(\dfrac{x}{y}-1\right)$
Q3. 実数$a, b$が$a+b=4, ab=-1$を満たすとき、次の式の値を求めよ。 [解答]
(1) $a^2+b^2$ (2) $(a-b)^2$ (3) $\dfrac{b}{a}+\dfrac{a}{b}$ (4) $\dfrac{b}{a^2}+\dfrac{a}{b^2}$
レベルアップ問題
LUQ11. 実数$a, b$が$a+b=5, ab=3, a>b$を満たすとき、次の式の値を求めよ。
(1) $a-b$ (2) $a^2-b^2$ (3) $\sqrt{a}-\sqrt{b}$
LUQ11. 実数$a, b$が$a+b=5, ab=3, a>b$を満たすとき、次の式の値を求めよ。
(1) $a-b$ (2) $a^2-b^2$ (3) $\sqrt{a}-\sqrt{b}$
今回はここで終わりです。
今回は2変数でしたが、
次回は少し難しくして、3変数にトライしたいと思います。
お読みいただきありがとうございます。
ではまた!
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練習問題の答え
Q1. (対称式の確認は省略。変形の仕方は何通りかある)
(1) $(x-y)^2=x^2-2xy+y^2=x^2+2xy+y^2-4xy=(x+y)^2-4xy=\bold{s^2-4t}$(2) $x^3+y^3=(x+y)(x^2-xy+y^2)$
ところで$x^2-xy+y^2=x^2+2xy+y^2-3xy=(x+y)^2-3xy$
よって、$x^3+y^3=(x+y)\{(x+y)^2-3xy\}=s(s^2-3t)=\bold{s^3-3st}$
(3) $x^4+y^4=x^4+2x^{2}y^{2}+y^2-2x^{2}y^{2}=(x^2+y^2)^2-2(xy)^2$
Q1の前の$x^2+y^2=(x+y)^2-2xy$を利用して、
$x^4+y^4=\{(x+y)^2-2xy\}^2-2(xy)^2=(s^2-2t)^2-2t^2=s^4-4s^{2}t+4t^2-2t^2$
$\phantom{x^4+y^4}=\bold{s^4-4s^{2}t+2t^2}$
(4) $(x^2-y)(x-y^2)=x^3-x^{2}y^{2}-xy+y^3$
ここで(2)の結果を使えば、
$(x^2-y)(x-y^2)=s(s^2-3t)-t^2-t=\bold{s^3-3st-t^2-t}$
Q2.
$x+y=(1+2\sqrt{2})+(1-2\sqrt{2})=2,\quad xy=(1+2\sqrt{2})(1-2\sqrt{2})=1-8=-7$(1) $x^2+y^2=(x+y)^2-2xy=2^2-2\cdot (-7)=4+14=\bold{18}$
(2) Q1(2)を使えば、
$x^3+y^3=(x+y)\{(x+y)^2-3xy\}=2\cdot \{2^2-3\cdot (-7)\}=\bold{50}$
(3) $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}=\dfrac{x+y}{xy}=\dfrac{2}{-7}=\bold{-\dfrac{2}{7}}$
(4) $\left(\dfrac{y}{x}-1\right)\left(\dfrac{x}{y}-1\right)=\dfrac{y}{x}\cdot \dfrac{x}{y}-\dfrac{y}{x}-\dfrac{x}{y}+1$
$\phantom{\left(\dfrac{y}{x}-1\right)\left(\dfrac{x}{y}-1\right)}=1-\left(\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}\right)+1=2-\dfrac{x^2+y^2}{xy}$
(1)の結果を使えば、
$\left(\dfrac{y}{x}-1\right)\left(\dfrac{x}{y}-1\right)=2-\dfrac{x^2+y^2}{xy}=2-\dfrac{18}{-7}=\bold{\dfrac{32}{7}}$
Q3.
(1) $a^2+b^2=(a+b)^2-2ab=4^2-2\cdot (-1)=\bold{18}$(2) Q1(1)を使えば、$(a-b)^2=(a+b)^2-4ab=4^2-4\cdot (-1)=\bold{20}$
(3) (1)を使えば、$\dfrac{b}{a}+\dfrac{a}{b}=\dfrac{a^2+b^2}{ab}=\dfrac{18}{-1}=\bold{-18}$
(4) $\dfrac{b}{a^2}+\dfrac{a}{b^2}=\dfrac{a^3+b^3}{(ab)^2}$
Q1(2)を使えば、$a^3+b^3=(a+b)\{(a+b)^2-3ab\}=4\cdot \{4^2-3\cdot (-1)\}=76$
よって、$\dfrac{b}{a^2}+\dfrac{a}{b^2}=\dfrac{a^3+b^3}{(ab)^2}=\dfrac{76}{(-1)^2}=\bold{76}$
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