2016年4月19日

【数学雑論】$ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f$の因数分解の別法とそれについての雑論

皆さん、こんにちは!
TomoKです!

前回まで4回も因数分解に関して
教科書に載ってるであろう話を書いてきたので、
たぶん、このブログでこの前の「追越し禁止」の話ぐらいには
ブログらしいことが書けるかもしれません!

ようやく数学の内容でブログらしいことが書ける…

やっぱりブログって
ただ事実を書き連ねるだけじゃ
つまんないんですよね…

今日は少し持論(自論?)を交えながら
書いていきたいと思います。



・一般的に教科書に載っている方法

x, y の2次式
$ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f\quad (a\neq 0, a,b,c,d,e,fは定数)$
の因数分解のとき、
ふつう教科書に紹介されるのは、
前回もご紹介したとおり、例えばxについて整理してから、
強引に「たすき掛け」する方法でした。

例えば、前回の例題EXQ1(2)
$2x^2+3xy-2y^2-5x+5y-3$
を因数分解するのには、
xについて整理して
$\quad 2x^2+3xy-2y^2-5x+5y-3\\
=\blue{2}x^2+(\orange{3y-5})x\green{-2y^2+5y-3}\\
=\blue{2}x^2+(\orange{3y-5})x\green{-(y-1)(2y-3)}$
としてから、
右の図のように「たすき掛け」して、
$2x^2+3xy-2y^2-5x+5y-3=(x+2y-3)(2x-y+1)$
とするのが"教科書流"の方法でした。

これはこれで確かに方法としては問題ない、
正当な方法です。

しかし、
「ようやく$ax^2+bx+c$のたすき掛けに慣れたところなのに、
今度はそこに文字が入るのか!!!」
と思って、
この方法が少しやりずらい、と考える人もいるかもしれません。

もちろん、今まで数で扱った対象に文字が登場することは
数学においてはとてもあたりまえなことで、
数学を勉強するときにはそのような「数学的な」抽象化に
少しずつ慣れていかなければならないんですが…

数が入るべきところに文字が入る、というのは
数学としてのハードルですが、
急にハードルを越えるのは大変です。

・もう1つの方法

そこで、ここでは、
強引に「たすき掛け」をせず、
$2x^2+3xy-2y^2-5x+5y-3$
を因数分解する方法をお教えします。

その名も  部分的因数分解

…な~んて勝手な名前まで付けましたが、
実は僕が考案したわけではなく、
すでに数研チャートには載っている手法です。

だから、知っていて、実際もう使ってるよ、
なんて人もいるかもしれませんが…

ではどうするのか、
早速見ていきましょう。

① $2x^2+3xy-2y^2-5x+5y-3$の2次の項$\red{2x^2+3x-2y^2}$を因数分解すると、
 $\red{2x^2+3xy-2y^2}=\orange{(x+2y)(2x-y)}$となる。

 よって、$2x^2+3xy-2y^2-5x+5y-3$が因数分解できるとすると、
 $\red{2x^2+3xy-2y^2}-5x+5y-3=(\orange{x+2y}+a)(\orange{2x-y}+b)\quad \cdots (*)$
 の形になるはず。

② 逆に(*)の右辺をそのまま展開すると、
 $(\orange{x+2y}+a)(\orange{2x-y}+b)=\red{2x^2+3xy-2y^2}+(\green{2a+b})x+(\blue{-a+2b})y+\purple{ab}$

③ これともとの式
 $\red{2x^2+3xy-2y^2}\green{-5}x+\blue{5}y\purple{-3}$
 を見比べて、
 $\left\{
\begin{align*}
\green{2a+b}&=\green{-5}\\
\blue{-a+2b}&=\blue{5}\\
\purple{ab}&=\purple{-3}
\end{align*}
\right.$
 を満たす$a,b$を見つければいい。

 ただし、2つの文字に3本の式が入っているので、
 どれか2つの式を満たす$a,b$の値が、
 残り1つの式に当てはまることを最後にチェックする。

 例えば、
 $\green{2a+b}=\green{-5}$と
 $blue{-a+2b}=\blue{5}$の2つの式が成り立つ$a,b$を
 連立方程式で求めると、$a=-3,b=1$となる。
 このとき、確かに$\purple{ab}=\purple{3}$になっている。

④ $a,b$がわかったので、$(*)$に戻って、
 $2x^2+3xy-2y^2-5x+5y-3=\boldsymbol{(x+2y-3)(2x-y+1)}$

以上の方法です。

①②で、2次の項($ax^2+bxy+cy^2$の部分)の因数分解をして、
③で残りの部分のつじつま合わせをする感じですね。

ちなみに③で
どれか2つの式を満たす$a,b$の値が、
 残り1つの式に当てはまることを最後にチェック
といいましたが、
もし仮に残り1つの式に当てはまらないときは、
その式は(共通因数をくくる以外に)因数分解できないことになりますので
このチェックを忘れずに。

これであれば、
ふつうの$ax^2+bxy+cy^2$の「たすき掛け」を①で行い、
②で展開、③で方程式を解く(またはあてはめる)だけで
因数分解が可能です。

(何で因数分解なのに方程式を解くの?
とか思うかもしれない…
そこがデメリットの1つですが…)

・「部分的因数分解」の背景(のようなもの)

この「部分的因数分解」ですが、
人によって、①で
$\red{2x^2+3xy-2y^2}=\orange{(x+2y)(2x-y)}$となるだけで、
$\red{2x^2+3xy-2y^2}-5x+5y-3=(\orange{x+2y}+a)(\orange{2x-y}+b)$
と決めてかかってもいいのはなぜかと
気になる人もいるかもしれません。

でもこれは単純に、
$(px+qy+r)(sx+ty+u)=\orange{(px+qy)(sx+ty)}+(pu+rs)x+(qu+rt)y+ru$において、
x,yの2次の項は$\orange{(px+qy)(sx+ty)}$からしか出てこないので、
$\red{2x^2+3xy-2y^2}=\orange{(px+qy)(sx+ty)}$とならざるを得ない
ということでわかります。

そこで、仮にそうだとすると、
残りの項の係数はどうなるだろう、
というのが②③の部分です。

今回紹介した解法は、
実は数学IIの「恒等式」で登場する次のことを使っています。

恒等式となるための必要十分条件
2つの$x,y$の整式$P(x,y),Q(x,y)$について、
$x,y$の値によらず、常に$P(x,y)=Q(x,y)$になるためには、
$P(x,y)$と$Q(x,y)$の、x,yの数が等しい項どうしの係数が互いに等しいことが必要十分である。

例えば、$x,y$の値によらず、
常に$\red{a}xy+\blue{b}x\green{-2}y+\orange{3}=\red{4}xy\blue{-}x+\green{c}y+\orange{d}$
になるには、
$\red{a=4}, \blue{b=-1}, \green{c=-2}, \orange{d=3}$
でなければならないし、そうすれば常に等しくなるよ、
ということです。
すごく当たり前のことを言っているように感じませんか?

言葉で書くと上のように面倒くさくなりますが、
両辺で係数を合わせれば、いつも等しいですよ、
という単純なことを言っています。

・「部分的因数分解」についての個人的意見

なんですが、
このことを数学IIでやるためだからか…
この解法は数学Iの教科書には
(少なくとも僕の高校時代のものには)載っていないです。

(と、いうと、
「教科書を全社調べてないのに」
とか言い始める人がいると思いますので、
実際に載っている教科書はないのか
機会があれば調べてみようかと思います。)

こういう式の見方って非常に大事だと僕は思います。
教科書に載ってないから、まだ習っていないから、
という理由だけで、数学的に大事なものが失われるというのは、
非常にもったいないことだと思うんです。
(でもロピタルは否定派なんです…自分でもなぜかわからないです)

今回の「部分的因数分解」と
前回の「一般的な方法」と
どっちが数学的に大事かというのは
人によると思いますが…

僕としては、
両者をやらせて見せてどっちのほうがやりやすいかは
学習者自身に判断してもらう
というのがいいと思います。

また、定期試験であれば、

・「因数分解せよ」と言われたらしぶしぶ「たすき掛け」で

そうでないときで、因数分解する必要が出たら
 計算スペースにちょこちょこ書いて「部分的因数分解」で

と使い分けるのも手ですね。
「習ってない方法だから」というだけで減点されては
たまったものではないですよ。
でも因数分解が主体の問題でなければ、
因数分解の手法は解答に書く必要ありませんものね…

もし、この「部分的因数分解」の手法が気に入っていただけましたら、
前回の練習問題Q1を「部分的因数分解」でやってみてください。
そうすれば、「部分的因数分解」の良き練習となって、
あなたにとって有意な戦法になると思います。

(ただし、「部分的因数分解」で行う場合には、
Q1の(1),(3)は最初に( )を開いてからやる必要があります。)

ということで、
今日は
$ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f$の因数分解の別法について
私見を交えてお話ししました。

今回の記事みたいに、ある問題に対して
じっくり研究するとか論じてみるという感じの記事を
今後も機会のあるごとに書いていきたいと思います。

では、今回はここまでです。
お読みいただいてありがとうございました。
ではまた!

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