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2016年7月23日

【高校数学I】逆・裏・対偶と対偶証明法

皆さんこんにちは!
TomoKです。

今回はまず、命題p\Rightarrow qから「形式的に」作られるいくつかの命題について取り上げます。

(補足:この記事を公開後、一部誤りがあるとの指摘を受け、
公開当日中に確認し、訂正をしました。ご指摘くださった方に御礼申し上げます。
その他不具合も確認したので訂正しました。以下は訂正後の内容です)

[1] 逆・裏・対偶

命題p\Rightarrow qに対し、
             q\Rightarrow pを、p\Rightarrow qの 
             \overline{p}\Rightarrow \overline{q}を、p\Rightarrow qの 
             \overline{q}\Rightarrow \overline{p}を、p\Rightarrow qの 対偶
と呼びます。

逆は文字どおり"\Rightarrow"の前後を逆にしたものです。

裏は"\Rightarrow"の前後でそのまま否定をとったものです。

対偶は、"\Rightarrow"の前後を入れ替えて、さらに否定をとったものです。
したがって、「対偶は逆の裏」になっています。

さて、逆・裏・対偶の真偽がどうなるのかについて、次の例題で見てみましょう。

例題
EXQ1. 次の命題の真偽を調べよ。また、逆・裏・対偶を作って、それらの真偽を調べよ。
「実数xについて, x>0ならばx^2>0である」

まず、元の命題は、正の数の2乗は必ず正だから、です。

次に、逆・裏・対偶を順番に調べていきましょう。

は、「ならば」の前後を入れ替えるので、
「(2つの実数x,yに対して,) \bold{x^2>0}ならば\bold{x>0}
となります。
これは、たとえばx=-1を反例としてとなります。
x=-1ならば、x^2=(-1)^2=1>0となるからです。

続いてですが、今度はもとの「ならば」の前後の否定をとりますから、
「(2つの実数x,yに対して,) \bold{x\leqq 0}ならば\bold{x^2\leqq 0}
となります。
これも、同じくx=-1のときが反例になって、になります。

最後。対偶ですが、「ならば」の前後を入れ替えてそれぞれの否定をとるので、
「(2つの実数x,yに対して,) \bold{x^2\leqq 0}ならば、\bold{x\leqq 0}
となります。
これは、x^2\leqq 0となるのは、x=0のときだけです。
(x\neq 0なら、必ずx^2>0になりますよね)
そしてx=0ならたしかにx\leqq 0が言えますから、です。

この例題の命題のように、命題「p\Rightarrow q」については、
もとの命題が真であっても、その逆が必ずしも真になるとは限らない
ことに注意しましょう。

ですが、実は次のことが必ず言えます。

対偶の真偽
命題p\Rightarrow qと、その対偶\overline{q}\Rightarrow \overline{p}の真偽は一致する。

確かに、上の例題でも、もとの命題は真で、対偶も真でした。

これは、p,qの成り立つようなxの集合を考えることで説明できます。

仮に、p\Rightarrow qが成り立っていたとしましょう。
考える全体集合をUとし、そのうちp,qの成り立つようなxの集合をそれぞれP,Qとすると、
p\Rightarrow qが成り立つので、P\subset Qになります。
ここで、P,Qの補集合を考えると、位置が逆転して\overline{Q}\subset \overline{P}が言えますが、
これは\overline{q}\Rightarrow \overline{p}が成り立つことにほかなりません。

したがって、もとの命題が真ならば、その対偶も真になることがわかりました。

一方、いまの下線部が真であることがわかったので、下線部の対偶をとることで、
「対偶が偽ならば、もとの命題が偽」が言えます。
したがって、もとの命題が偽のときは、対偶の対偶がもとの命題に戻ることを考えて、
対偶が偽であることがわかります。

以上から、もとの命題と対偶は真偽が一致することがわかりました。

ところで、逆と裏の関係も対偶どうしなので、ある命題の逆と裏の真偽も一致します。

練習問題
Q1. 次の命題の真偽を答えよ。
  また、それぞれの逆・裏・対偶を作り、それらの真偽を答えよ。   [解答]
 (1) 実数xについて、x=0\Rightarrow x^2=0
 (2) 整数nについて、nが6の倍数\Rightarrow nが3の倍数
 (3) 整数nについて、n^2が4の倍数\Rightarrow nが4の倍数

[2] 対偶証明法

さて、もとの命題とその対偶との真偽が一致するので、
・命題p\Rightarrow qを示すのに、その対偶\overline{q}\Rightarrow \overline{p}を示してもよい
ということが言えます。
これは、命題p\Rightarrow qを直接導くことが難しい場合に利用されることがあります。

例題
EXQ2. 実数x,yについて、
  x+y\neq 4ならば、x\neq 2またはy\neq 2であることを証明せよ。

これは、そのままx+y\neq 4からはじめて、x\neq 2またはy\neq 2を示すのは極めて難しいです。
そこで、この命題の対偶を考えます。
x\neq 2またはy\neq 2の否定は「x=2かつy=2」になることを注意すると、
命題の対偶は、「x=2かつy=2ならば、x+y=4」となりますね。
これだったら簡単です。2+2=4ですから。

したがって、改めてこの命題の証明を清書すると、次のようになります。

[証明]
示すべき命題の対偶は、「x=2かつy=2ならば、x+y=4」であるが、
x=2かつy=2ならば、x+y=2+2=4である。
したがって、対偶が示されたので、示すべき命題が成り立つことも示された。 (終)

まず、対偶がどうなるかを記し、その対偶を示します。
最後は、対偶が示されたので、もとの命題が成り立つことを言えば、完結します。

練習問題
Q2. 対偶を証明することにより、次のことを証明せよ。   [解答]
 (1) 実数xについて、x^2\neq 1ならば、x\neq 1である。
 (2) 整数aについて、a^2が偶数ならば、aも偶数である。

次回も、対偶証明とはまた別の、直接でない証明の方法を紹介したいと思います。

では、今回はここまで。
お読みくださりありがとうございました。
ではまた!


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練習問題の答え

Q1.
(1) もとの命題は、x^2=0^2=0より
 逆は「x^2=0\Rightarrow x=0」 x^2=0の両辺の平方根をとれば、x=0 よって 
 裏は「x\neq 0\Rightarrow x^2\neq 0」 
    x\neq 0なら、xは正または負だから、x^2>0 よって
 対偶は「x^2\neq 0\Rightarrow x\neq 0
     x^2\neq 0なら、x^2>0 正の数の平方根に0は含まれないから、x\neq 0 よって
  (もちろん、もとの命題が真だから対偶も真、といってもよい。)

(2) もとの命題は、n=6k(kは整数)ならn=3\cdot 2kだから、
 逆は「nが3の倍数\Rightarrow nが6の倍数」 n=3を反例として 
 裏は「nが6の倍数でない\Rightarrow nが3の倍数でない」 n=3を反例として
 対偶は「nが3の倍数でない\Rightarrow nが6の倍数でない」
     もとの命題が真なので、
  (これをそのまま示すのは結構大変。この問題は逃げ… 自信がある人は直接示してみて)

(3) もとの命題は、n=2のとき、n^2=4が4の倍数だが、n=2は4の倍数でないので、
  n=2を反例として
 逆は「nが4の倍数\Rightarrow n^2が4の倍数」
     n=4k(kは整数)なら、n^2=16k^2=4\cdot 4k^2は4の倍数 よって 
 裏は「n^2が4の倍数でない\Rightarrow nが4の倍数でない」
     これは逆の対偶であるから、
   (これを直接示すのは難しいが、「素因数分解の一意性」があればいける)
 対偶は「nが4の倍数でない\Rightarrow n^2が4の倍数でない」
     もとの命題が偽なのでだが、反例も同じくn=2

Q2.
(1) 示すべき命題の対偶は、「x=1ならばx^2=1」だが、x=1ならばx^2=1^2=1である。
 よって、対偶が示されたので、示すべき命題が成り立つことが示された。 (終)

(2) 示すべき命題の対偶は、「aが奇数ならばa^2は奇数」である。
 aが奇数であれば、ある整数kを用いて、a=2k+1と書けるが、
 a^2=(2k+1)^2=4k^2+4k+1=2(2k^2+2k)+1であり、
 2k^2+2kが整数だから、a^2は奇数である。
 よって、対偶が示されたので、示すべき命題が成り立つことが示された。 (終)

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