TomoKです。
今日は「すべて」と「ある」を用いた命題について考えます。
前回同様、ある集合$U$を全体集合とし、
$U$の要素$x$の条件$p(x), q(x)$を考えます。
そしてそのとき、$U$の部分集合として、
条件$p(x)$を満たす$x$全体の集合を$P$とします。
さて、$U$の要素$x$に関する命題
すべての$x$について$p(x)$
は、$x$が$U$の要素であれば、必ず$x$が条件$p(x)$を満たすことを意味します。
$P$は$p(x)$を満たす$U$の要素全体の集合ですから、
「すべての$U$の要素$x$について$p(x)$」が真であるときは、$\orange{U=P}$となります。
「すべての」の部分は、人によって、
「任意の」とか「勝手な」という言い方をすることもありますが、
すべて同じ意味です。
次に、これと(ある意味)対になる命題として、
これは、$U$の中に、$p(x)$を満たす$x$がある、という意味です。
今度は、「ある$U$の要素$x$について$p(x)$」が真であることは、$\green{P\neq \emptyset}$ということになります。
ちなみにこれも言い方が人によっていろいろありまして、
「ある$x$について$p(x)$」のことを、
「$p(x)$を満たす$x$が(少なくとも1つ)存在する」とか、
「適当な$x$について$p(x)$」と言ったりします。
(ちなみに数学でいう「適当な」は、「条件を満たすようにとってきた」というような意味です)
さて、この「すべて」と「ある」を用いた命題が偽であるとはどんなときか、考えましょう。
「すべての」の部分は、人によって、
「任意の」とか「勝手な」という言い方をすることもありますが、
すべて同じ意味です。
次に、これと(ある意味)対になる命題として、
ある$x$について$p(x)$
というのがあります。これは、$U$の中に、$p(x)$を満たす$x$がある、という意味です。
今度は、「ある$U$の要素$x$について$p(x)$」が真であることは、$\green{P\neq \emptyset}$ということになります。
ちなみにこれも言い方が人によっていろいろありまして、
「ある$x$について$p(x)$」のことを、
「$p(x)$を満たす$x$が(少なくとも1つ)存在する」とか、
「適当な$x$について$p(x)$」と言ったりします。
(ちなみに数学でいう「適当な」は、「条件を満たすようにとってきた」というような意味です)
さて、この「すべて」と「ある」を用いた命題が偽であるとはどんなときか、考えましょう。
まず、「すべてのUの要素$x$について$p(x)$」が偽であるのは、
さっきの$P$を用いれば、$U=P$が偽、つまり、$U\neq P$ということです。
$P$は全体集合$U$の部分集合なので、これの意味することは、
$U$の要素で、$P$の要素でないものがあるということです。
集合の式で書くと、$U\neq P$だから、$\overline{P}\neq \emptyset$ということです。
したがって、
「すべてのUの要素$x$について$p(x)$」が偽であるときは、
「あるUの要素$x$について$\overline{p(x)}$」が真のとき
と分かります。
言葉や式だとわかりにくいと思いますが、図で書けば下のようになります。
次に、「ある$U$の要素$x$について$p(x)$」が偽であるのは、
$P\neq \emptyset$が偽、すなわち$P=\emptyset$ということです。
これは、$p(x)$を満たす$x$が($U$の中に)存在しない、
すなわち、すべての$x$について$p(x)$が満たさない、ということです。
これも集合で言えば、$P=\emptyset$だから、$\overline{P}=U$ということになりますね。
したがって、
「あるUの要素$x$について$p(x)$」が偽であるときは、
「すべてのUの要素$x$について$\overline{p(x)}$」が真のとき
となります。
これも図で見るといくらかわかりやすいと思います。
ここまでのことを、「否定」という言葉で表現すると、次のことが言えたことになります。
このように、「すべて」と「ある」のときも、否定をとると互いに入れ替わります。
条件部分が否定されるだけでなく、「すべて」と「ある」が入れ替わることに注意です。
(1)は、$x^2>0$の否定は$x^2\neq 1$なので、
(1)の否定は $\bold{ある実数xについて x^2\neq 1}$
(2)は、$n$が自然数の範囲では「$n$が偶数」の否定は「$n$が奇数」なので、
(2)の否定は、$\bold{すべての自然数nについて nは奇数}$
(3)はちょっと注意。
「$x>0$または$y>0$」の否定は、「$x\leqq 0$かつ$y\leqq 0$」でしたよね。
したがって、(3)の否定は、$\bold{ある実数x,yについて x\leqq 0かつy\leqq 0}$です。
さて、先ほどの話から、次のことが言えます。
・「すべての$x$について$p(x)$」が真であることを言うには、
xをとりあえず1つとってきて、それが$p(x)$を満たすことを証明する
・「すべての$x$について$p(x)$」が偽であることを言うには、
$p(x)$を満たさないxを1つ挙げる(反例を示す)
だから、「すべて」を用いた命題は、
感覚としては「ならば」のときと同じようなものだと考えていいでしょう。
ですが、「ある」のときは状況が逆転しまして、
・「ある$x$について$p(x)$」が真であることを言うには、
$p(x)$を満たすxを1つ挙げる
・「ある$x$について$p(x)$」が偽であることを言うには、
xをとりあえずとってきて、それが$p(x)$を満たさないことを証明する
(または、$p(x)$を満たすxがあるとして矛盾を導く →「背理法」 後日扱います。)
となります。
(1)は、正の数でも、0でも、負の数でも、
どんな実数をとってきても、2乗すれば必ず0以上になりましたから、
(1)は真です。
(2)はどうかというと、
例えば$a=3$とすると、$\sqrt{a}=\sqrt{3}=1.732\cdots$となり、整数になりません。
したがって、反例$a=3$により、(2)は偽です。
(3)ですが、今度は「ある」を用いた命題です。
素数$p$で偶数であるものといえば、$p=2$がありますね。
ですから、(3)は真です。
最後の(4)です。
これも「ある」を使った命題ですが、
どんな実数$x,y$をとってきても、$x^2\geqq 0$かつ$y^2\geqq 0$より$x^2+y^2\geqq 0$になります。
すなわち、どんな実数$x,y$でも、$x^2+y^2<0$とはなりえないので、
(4)は偽となります。
さて、ここまでで、いろいろな命題を見ていきました。
次回は、これを踏まえ、数学をやるうえで大事な考え方である
「十分条件」と「必要条件」について扱います。
では、今回はここまで。
お読みくださり、ありがとうございました。
ではまた!
--------------------
練習問題の答え
(2) すべての実数$x,y$について $x^2+y^2\neq 0$
(3) すべての四角形ABCDについて AB≠CD または AD≠BC
(このときの反例は、負の数であればどれでもOK)
(2) $x=1, y=-1$のとき$x+y=1+(-1)=0$だから、これをもって真
(「ある」なので、適する例を見つけることになるが、
$x$と$y$が符号を入れ換えただけだったり、$x=0, y=0$の場合を挙げたりできればOK)
(3) 真。
$m$を偶数とすると、ある整数$k$を用いて、$m=2k$と書ける。
このとき、$\dfrac{m}{2}=\dfrac{2k}{2}=k$となり、これは整数。
(4) 偽。
この命題が偽であることを示すには、
「すべての実数$x$に対して$x^2+1\neq 0$」を示せばよい。
$x$を実数とすると、$x^2\geqq 0$だから、$x^2+1>x^{2}\geqq 0$
よって、$x^2+1>0$ したがって $x^2+1\neq 0$
さっきの$P$を用いれば、$U=P$が偽、つまり、$U\neq P$ということです。
$P$は全体集合$U$の部分集合なので、これの意味することは、
$U$の要素で、$P$の要素でないものがあるということです。
集合の式で書くと、$U\neq P$だから、$\overline{P}\neq \emptyset$ということです。
したがって、
「すべてのUの要素$x$について$p(x)$」が偽であるときは、
「あるUの要素$x$について$\overline{p(x)}$」が真のとき
と分かります。
言葉や式だとわかりにくいと思いますが、図で書けば下のようになります。
次に、「ある$U$の要素$x$について$p(x)$」が偽であるのは、
$P\neq \emptyset$が偽、すなわち$P=\emptyset$ということです。
これは、$p(x)$を満たす$x$が($U$の中に)存在しない、
すなわち、すべての$x$について$p(x)$が満たさない、ということです。
これも集合で言えば、$P=\emptyset$だから、$\overline{P}=U$ということになりますね。
したがって、
「あるUの要素$x$について$p(x)$」が偽であるときは、
「すべてのUの要素$x$について$\overline{p(x)}$」が真のとき
となります。
これも図で見るといくらかわかりやすいと思います。
ここまでのことを、「否定」という言葉で表現すると、次のことが言えたことになります。
ド・モルガンの法則(「すべて」と「ある」ver.)
2つの条件$p,q$について、次が成り立つ。
(1) 「すべての$x$について$p(x)$」の否定は、「ある$x$について$\overline{p(x)}$」
(2) 「ある$x$について$p(x)$」の否定は、「すべての$x$について$\overline{p(x)}$」
2つの条件$p,q$について、次が成り立つ。
(1) 「すべての$x$について$p(x)$」の否定は、「ある$x$について$\overline{p(x)}$」
(2) 「ある$x$について$p(x)$」の否定は、「すべての$x$について$\overline{p(x)}$」
このように、「すべて」と「ある」のときも、否定をとると互いに入れ替わります。
例題
EXQ1. 次の命題の否定を作れ。
(1) すべての実数$x$について $x^2=1$
(2) ある自然数$n$について $n$は偶数
(3) すべての実数$x,y$について $x>0$または$y>0$
EXQ1. 次の命題の否定を作れ。
(1) すべての実数$x$について $x^2=1$
(2) ある自然数$n$について $n$は偶数
(3) すべての実数$x,y$について $x>0$または$y>0$
条件部分が否定されるだけでなく、「すべて」と「ある」が入れ替わることに注意です。
(1)は、$x^2>0$の否定は$x^2\neq 1$なので、
(1)の否定は $\bold{ある実数xについて x^2\neq 1}$
(2)は、$n$が自然数の範囲では「$n$が偶数」の否定は「$n$が奇数」なので、
(2)の否定は、$\bold{すべての自然数nについて nは奇数}$
(3)はちょっと注意。
「$x>0$または$y>0$」の否定は、「$x\leqq 0$かつ$y\leqq 0$」でしたよね。
したがって、(3)の否定は、$\bold{ある実数x,yについて x\leqq 0かつy\leqq 0}$です。
練習問題
Q1. 次の命題の否定をつくれ。 [解答]
(1) すべての実数$x$について $x^2>x$
(2) ある実数$x,y$について $x^2+y^2=0$
(3) ある四角形ABCDについて AB=CD かつ AD=BC
Q1. 次の命題の否定をつくれ。 [解答]
(1) すべての実数$x$について $x^2>x$
(2) ある実数$x,y$について $x^2+y^2=0$
(3) ある四角形ABCDについて AB=CD かつ AD=BC
さて、先ほどの話から、次のことが言えます。
・「すべての$x$について$p(x)$」が真であることを言うには、
xをとりあえず1つとってきて、それが$p(x)$を満たすことを証明する
・「すべての$x$について$p(x)$」が偽であることを言うには、
$p(x)$を満たさないxを1つ挙げる(反例を示す)
だから、「すべて」を用いた命題は、
感覚としては「ならば」のときと同じようなものだと考えていいでしょう。
ですが、「ある」のときは状況が逆転しまして、
・「ある$x$について$p(x)$」が真であることを言うには、
$p(x)$を満たすxを1つ挙げる
・「ある$x$について$p(x)$」が偽であることを言うには、
xをとりあえずとってきて、それが$p(x)$を満たさないことを証明する
(または、$p(x)$を満たすxがあるとして矛盾を導く →「背理法」 後日扱います。)
となります。
例題
EXQ2. 次の命題の真偽を答えよ。
(1) すべての実数$x$について $x^2\geqq 0$
(2) すべての整数$a$について $\sqrt{a}$は整数である
(3) ある素数$p$について $p$は偶数である
(4) ある実数$x,y$について $x^2+y^2<0$
EXQ2. 次の命題の真偽を答えよ。
(1) すべての実数$x$について $x^2\geqq 0$
(2) すべての整数$a$について $\sqrt{a}$は整数である
(3) ある素数$p$について $p$は偶数である
(4) ある実数$x,y$について $x^2+y^2<0$
(1)は、正の数でも、0でも、負の数でも、
どんな実数をとってきても、2乗すれば必ず0以上になりましたから、
(1)は真です。
(2)はどうかというと、
例えば$a=3$とすると、$\sqrt{a}=\sqrt{3}=1.732\cdots$となり、整数になりません。
したがって、反例$a=3$により、(2)は偽です。
(3)ですが、今度は「ある」を用いた命題です。
素数$p$で偶数であるものといえば、$p=2$がありますね。
ですから、(3)は真です。
最後の(4)です。
これも「ある」を使った命題ですが、
どんな実数$x,y$をとってきても、$x^2\geqq 0$かつ$y^2\geqq 0$より$x^2+y^2\geqq 0$になります。
すなわち、どんな実数$x,y$でも、$x^2+y^2<0$とはなりえないので、
(4)は偽となります。
練習問題
Q2. 次の命題の真偽を答えよ。 [解答]
(1) すべての実数$x$について $|x|=x$
(2) ある実数$x,y$について $x+y=0$
(3) すべての偶数$m$について $\dfrac{m}{2}$は整数
(4) ある実数$x$について $x^2+1=0$
Q2. 次の命題の真偽を答えよ。 [解答]
(1) すべての実数$x$について $|x|=x$
(2) ある実数$x,y$について $x+y=0$
(3) すべての偶数$m$について $\dfrac{m}{2}$は整数
(4) ある実数$x$について $x^2+1=0$
レベルアップ問題
LUQ12. 実数$x,y$に関する条件$p(x,y)$について、次は成り立つか。
(1) 「すべての実数$x$について、ある実数$y$があって、$p(x,y)$」が真ならば、
「ある実数$y$があって、すべての実数$x$について、$p(x,y)$」も真である。
(2) 「ある実数$y$があって、すべての実数$x$について、$p(x,y)$」が真ならば、
「すべての実数$x$について、ある実数$y$があって、$p(x,y)$」も真である。
LUQ13. 次の命題の真偽を答えよ。
(1) すべての実数$a$について、ある実数$x$があって、$x^2=a$
(2) ある実数$x$があって、すべての実数$a$について、$x^2=a$
(3) すべての自然数$K$について、ある自然数$N$があって、
$N$より大きいすべての自然数$n$について、$\sqrt{n}>K$
LUQ12. 実数$x,y$に関する条件$p(x,y)$について、次は成り立つか。
(1) 「すべての実数$x$について、ある実数$y$があって、$p(x,y)$」が真ならば、
「ある実数$y$があって、すべての実数$x$について、$p(x,y)$」も真である。
(2) 「ある実数$y$があって、すべての実数$x$について、$p(x,y)$」が真ならば、
「すべての実数$x$について、ある実数$y$があって、$p(x,y)$」も真である。
LUQ13. 次の命題の真偽を答えよ。
(1) すべての実数$a$について、ある実数$x$があって、$x^2=a$
(2) ある実数$x$があって、すべての実数$a$について、$x^2=a$
(3) すべての自然数$K$について、ある自然数$N$があって、
$N$より大きいすべての自然数$n$について、$\sqrt{n}>K$
さて、ここまでで、いろいろな命題を見ていきました。
次回は、これを踏まえ、数学をやるうえで大事な考え方である
「十分条件」と「必要条件」について扱います。
では、今回はここまで。
お読みくださり、ありがとうございました。
ではまた!
--------------------
練習問題の答え
Q1.
(1) ある実数$x$について $x^2\leqq x$(2) すべての実数$x,y$について $x^2+y^2\neq 0$
(3) すべての四角形ABCDについて AB≠CD または AD≠BC
Q2.
(1) $|-1|=1\neq -1$なので、反例$x=-1$をもって、偽(このときの反例は、負の数であればどれでもOK)
(2) $x=1, y=-1$のとき$x+y=1+(-1)=0$だから、これをもって真
(「ある」なので、適する例を見つけることになるが、
$x$と$y$が符号を入れ換えただけだったり、$x=0, y=0$の場合を挙げたりできればOK)
(3) 真。
$m$を偶数とすると、ある整数$k$を用いて、$m=2k$と書ける。
このとき、$\dfrac{m}{2}=\dfrac{2k}{2}=k$となり、これは整数。
(4) 偽。
この命題が偽であることを示すには、
「すべての実数$x$に対して$x^2+1\neq 0$」を示せばよい。
$x$を実数とすると、$x^2\geqq 0$だから、$x^2+1>x^{2}\geqq 0$
よって、$x^2+1>0$ したがって $x^2+1\neq 0$
0 件のコメント:
コメントを投稿