TomoKです。
今回はまず、命題$p\Rightarrow q$から「形式的に」作られるいくつかの命題について取り上げます。
(補足:この記事を公開後、一部誤りがあるとの指摘を受け、
公開当日中に確認し、訂正をしました。ご指摘くださった方に御礼申し上げます。
その他不具合も確認したので訂正しました。以下は訂正後の内容です)
[1] 逆・裏・対偶
命題$p\Rightarrow q$に対し、$q\Rightarrow p$を、$p\Rightarrow q$の 逆
$\overline{p}\Rightarrow \overline{q}$を、$p\Rightarrow q$の 裏
$\overline{q}\Rightarrow \overline{p}$を、$p\Rightarrow q$の 対偶
と呼びます。
逆は文字どおり"$\Rightarrow$"の前後を逆にしたものです。
裏は"$\Rightarrow$"の前後でそのまま否定をとったものです。
対偶は、"$\Rightarrow$"の前後を入れ替えて、さらに否定をとったものです。
したがって、「対偶は逆の裏」になっています。
さて、逆・裏・対偶の真偽がどうなるのかについて、次の例題で見てみましょう。
例題
EXQ1. 次の命題の真偽を調べよ。また、逆・裏・対偶を作って、それらの真偽を調べよ。
EXQ1. 次の命題の真偽を調べよ。また、逆・裏・対偶を作って、それらの真偽を調べよ。
「実数$x$について, $x>0$ならば$x^2>0$である」
まず、元の命題は、正の数の2乗は必ず正だから、真です。
次に、逆・裏・対偶を順番に調べていきましょう。
逆は、「ならば」の前後を入れ替えるので、
「(2つの実数$x,y$に対して,) $\bold{x^2>0}$ならば$\bold{x>0}$」
となります。
これは、たとえば$x=-1$を反例として偽となります。
$x=-1$ならば、$x^2=(-1)^2=1>0$となるからです。
続いて裏ですが、今度はもとの「ならば」の前後の否定をとりますから、
「(2つの実数$x,y$に対して,) $\bold{x\leqq 0}$ならば$\bold{x^2\leqq 0}$」
となります。
これも、同じく$x=-1$のときが反例になって、偽になります。
最後。対偶ですが、「ならば」の前後を入れ替えてそれぞれの否定をとるので、
「(2つの実数$x,y$に対して,) $\bold{x^2\leqq 0}$ならば、$\bold{x\leqq 0}$」
となります。
これは、$x^2\leqq 0$となるのは、$x=0$のときだけです。
($x\neq 0$なら、必ず$x^2>0$になりますよね)
そして$x=0$ならたしかに$x\leqq 0$が言えますから、真です。
この例題の命題のように、命題「$p\Rightarrow q$」については、
・もとの命題が真であっても、その逆が必ずしも真になるとは限らない
ことに注意しましょう。
ですが、実は次のことが必ず言えます。
対偶の真偽
命題$p\Rightarrow q$と、その対偶$\overline{q}\Rightarrow \overline{p}$の真偽は一致する。
命題$p\Rightarrow q$と、その対偶$\overline{q}\Rightarrow \overline{p}$の真偽は一致する。
確かに、上の例題でも、もとの命題は真で、対偶も真でした。
これは、$p,q$の成り立つような$x$の集合を考えることで説明できます。
仮に、$p\Rightarrow q$が成り立っていたとしましょう。
考える全体集合を$U$とし、そのうち$p,q$の成り立つような$x$の集合をそれぞれ$P,Q$とすると、
$p\Rightarrow q$が成り立つので、$P\subset Q$になります。
ここで、$P,Q$の補集合を考えると、位置が逆転して$\overline{Q}\subset \overline{P}$が言えますが、
これは$\overline{q}\Rightarrow \overline{p}$が成り立つことにほかなりません。
したがって、もとの命題が真ならば、その対偶も真になることがわかりました。
一方、いまの下線部が真であることがわかったので、下線部の対偶をとることで、
「対偶が偽ならば、もとの命題が偽」が言えます。
したがって、もとの命題が偽のときは、対偶の対偶がもとの命題に戻ることを考えて、
対偶が偽であることがわかります。
以上から、もとの命題と対偶は真偽が一致することがわかりました。
ところで、逆と裏の関係も対偶どうしなので、ある命題の逆と裏の真偽も一致します。
練習問題
Q1. 次の命題の真偽を答えよ。
また、それぞれの逆・裏・対偶を作り、それらの真偽を答えよ。 [解答]
(1) 実数$x$について、$x=0\Rightarrow x^2=0$
(2) 整数$n$について、$n$が6の倍数$\Rightarrow n$が3の倍数
(3) 整数$n$について、$n^2$が4の倍数$\Rightarrow n$が4の倍数
Q1. 次の命題の真偽を答えよ。
また、それぞれの逆・裏・対偶を作り、それらの真偽を答えよ。 [解答]
(1) 実数$x$について、$x=0\Rightarrow x^2=0$
(2) 整数$n$について、$n$が6の倍数$\Rightarrow n$が3の倍数
(3) 整数$n$について、$n^2$が4の倍数$\Rightarrow n$が4の倍数
[2] 対偶証明法
さて、もとの命題とその対偶との真偽が一致するので、・命題$p\Rightarrow q$を示すのに、その対偶$\overline{q}\Rightarrow \overline{p}$を示してもよい
ということが言えます。
これは、命題$p\Rightarrow q$を直接導くことが難しい場合に利用されることがあります。
例題
EXQ2. 実数$x,y$について、
$x+y\neq 4$ならば、$x\neq 2$または$y\neq 2$であることを証明せよ。
EXQ2. 実数$x,y$について、
$x+y\neq 4$ならば、$x\neq 2$または$y\neq 2$であることを証明せよ。
これは、そのまま$x+y\neq 4$からはじめて、$x\neq 2$または$y\neq 2$を示すのは極めて難しいです。
そこで、この命題の対偶を考えます。
$x\neq 2$または$y\neq 2$の否定は「$x=2$かつ$y=2$」になることを注意すると、
命題の対偶は、「$x=2$かつ$y=2$ならば、$x+y=4$」となりますね。
これだったら簡単です。$2+2=4$ですから。
したがって、改めてこの命題の証明を清書すると、次のようになります。
[証明]
示すべき命題の対偶は、「$x=2$かつ$y=2$ならば、$x+y=4$」であるが、
$x=2$かつ$y=2$ならば、$x+y=2+2=4$である。
したがって、対偶が示されたので、示すべき命題が成り立つことも示された。 (終)
示すべき命題の対偶は、「$x=2$かつ$y=2$ならば、$x+y=4$」であるが、
$x=2$かつ$y=2$ならば、$x+y=2+2=4$である。
したがって、対偶が示されたので、示すべき命題が成り立つことも示された。 (終)
まず、対偶がどうなるかを記し、その対偶を示します。
最後は、対偶が示されたので、もとの命題が成り立つことを言えば、完結します。
練習問題
Q2. 対偶を証明することにより、次のことを証明せよ。 [解答]
(1) 実数$x$について、$x^2\neq 1$ならば、$x\neq 1$である。
(2) 整数$a$について、$a^2$が偶数ならば、$a$も偶数である。
Q2. 対偶を証明することにより、次のことを証明せよ。 [解答]
(1) 実数$x$について、$x^2\neq 1$ならば、$x\neq 1$である。
(2) 整数$a$について、$a^2$が偶数ならば、$a$も偶数である。
次回も、対偶証明とはまた別の、直接でない証明の方法を紹介したいと思います。
では、今回はここまで。
お読みくださりありがとうございました。
ではまた!