2016年6月17日

【高校数学I】ド・モルガンの法則

皆さん、こんにちは!
TomoKです。

また1週間空いてしまいました。。。
図があると遅くなってしまいますね…
図形の単元に入ったら大変そうです…

今日は「ド・モルガンの法則」という重要な定理を扱います。
(すみません、前回予告で「ド・モルガンの定理」と言ってましたね…)

ド・モルガンの法則
全体集合$U$の部分集合$A,B$について、次が成り立つ。
(1) $\overline{A\orange{\cap}B}=\overline{A}\green{\cup}\overline{B}$
(2) $\overline{A\green{\cup}B}=\overline{A}\orange{\cap}\overline{B}$

「補集合(の記号)を分配すると、$\orange{\cap}$と$\green{\cup}$が入れ替わる」というのが、
この法則の言っていることです。

これはベン図で考えると直感的にわかります。

(1)のほうですが、
$\overline{A\cap B}$が$A\cap B$の補集合で、
下の左の薄赤部分ですね。

一方、$\overline{A}\cup \overline{B}$は
$\overline{A}$と$\overline{B}$の和集合です。
下の右の図で、青斜線が$\overline{A}$, 緑斜線が$\overline{B}$で、
その一方でも入っていれば$\overline{A}\cup \overline{B}$に含まれますから、
確かに$\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup \overline{B}$がわかりますね。

$\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup \overline{B}$
右の図の青斜線部は$\overline{A}$, 緑斜線部は$\overline{B}$

同じようにして、(2)もベン図を使って理解できます。

練習問題
Q1. $\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B}$を、上のようにベン図を用いて確かめよ。   [解答]

さて、今の法則に関係する論理の話を少し。

次の、「xさん」に関する文章pを考えましょう。
$p : xさんは携帯電話を持っていて、\orange{かつ}パソコンを持っている$
pが正しいかどうかは、「xさん」がだれなのかによって決まります。
(つまり、pは「xさんに関する条件」といえます。)

さて、この条件pに対し、意味としてその反対の条件である、
「pでない」という条件を考えます。
集合$P$に対し、$P$の要素でないものの集まりを$\overline{P}$と書いたように、
条件pに対し、「pでない」という条件を$\overline{p}$で表します。
(条件pの否定、と呼びます。)

$\overline{p} : 「xさんは携帯電話を持っていて、\orange{かつ}パソコンを持っている」\red{でない}$ …(*)

さて、人全員の集合$U$を全体集合として、
その部分集合として、次の3つの集合を考えます。

$\begin{align*} P&=\{x\mid xさんは携帯電話を持っていて、\orange{かつ}パソコンを持っている\}\\ A&=\{ x\mid xさんは携帯電話を持っている\}\\ B&=\{x\mid xさんはパソコンを持っている\}\end{align*}$

このとき、
$P$は、$U$の要素で、条件pを満たすもの全体の集合
であり、とすると、
$\overline{P}$は、$U$の要素で、条件pを満たさない、
すなわち、条件「pでない」を満たすもの全体の集合
であることがわかります。

一方、$P$を、$A$と$B$を使って表すと、「かつ」があることから、
$P=A\cap B$であることがわかります。
($A\orange{\cap}B=\{x\mid x\in A\quad \orange{かつ}\quad x\in B\}$でしたね→前回のココ参照
また、$A\green{\cup}B=\{x\mid x\in A\quad \green{または}\quad x\in B\}$も思い出しましょう。)

すると、$\overline{P}$は、上の「ド・モルガンの法則」を使って、次のように書けます。

$\begin{align*} \red{\overline{P}}&=\overline{A\orange{\cap}B}\\ &=\overline{A}\green{\cup} \overline{B}\\ &=\{x\mid xさんは携帯電話を持ってい\red{ない}\}\green{\cup}\{x\mid xさんはパソコンを持ってい\red{ない}\}\\ &=\{x\mid xさんは携帯電話を持ってい\red{ない}か、\green{または}、パソコンを持ってい\red{ない}\}\end{align*}$

したがって、「pでない」という条件は、次のように書き直せます。
上の(*)とよく見比べてください。

$\overline{p} : xさんは携帯電話を持ってい\red{ない}か、\green{または}、パソコンを持ってい\red{ない}$

このようにして、集合と似たようなことが、普通の文章でも成り立ちます。

ド・モルガンの法則(条件ver.)
2つの条件$p,q$について、次が成り立つ。
(1) 「$p\orange{かつ}q$」の否定は、「$p\red{でない}\quad \green{または}\quad q\red{でない}$」
(2) 「$p\green{または}q$」の否定は、「$p\red{でない}\quad \orange{かつ}\quad q\red{でない}$」

集合のときと条件のときとで、
補集合」と「否定」、「$\cap$」と「かつ」、「$\cup$」と「または」が
それぞれ(意味的に)対応していることを確かめてください。

例えば、条件$p$を、
$p : 整数$a$が2でも3でも割り切れる$
として、$p$の否定を考えます。

条件$p$は、あえて「かつ」を入れて、
「整数$a$が2で割り切れ、かつ3でも割り切れる」ということができます。
そこで、上の「ド・モルガンの法則」を使うと、
$p$の否定$\overline{p}$は、
$\overline{p} : 整数{a}が2で割り切れ\red{ない}か、\green{または}3で割り切れ\red{ない}$
となります。

一方、今度は条件$q$を、
$q : 整数$a$が2で割り切れるか、3で割り切れる$
として、$q$の否定を考えます。

これも、条件$q$をあえて「または」を入れて、
「整数$a$が2で割り切れ、または3でも割り切れる」ということができますから、
$q$の否定$\overline{q}$は、
$\overline{q} : 整数{a}が2で割り切れ\red{なく}、\orange{かつ}3でも割り切れ\red{ない}$
となります。

練習問題
Q2. 次の条件の否定を作れ。   [解答]
 (1) 自然数$n$が奇数かつ素数である
 (2) 実数$x$が$x<1$または$x>2$である
 (3) $a$さんはテニス部かバレーボール部に入っている
 (4) $s$さんはA高校にもB高校にも通っていない

と、いうわけで、
少し小難しい話をしましたが、
ご理解いただけたならうれしいです。

実は次回以降も、こういった論理の話を基本的にします。
1つずつ理解していってほしいと思います。

次回の内容としては、
ある文章が正しいとか誤っているとかを判定することについて、お話しします。
これは数学においては大変大事なエッセンスですので、しっかり学びましょう。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。
ではまた!

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練習問題の答え

Q1.
下の図を参照。


Q2.
それぞれ一例
(1) 自然数$n$が偶数か、(または)素数でない (自然数$n$が奇数でないか素数でない)

(2) 実数$x$が$x\geq 1$かつ$x\leq 2$である (実数$x$が$1\leq x\leq 2$を満たす)

(3) $a$さんはテニス部にも入っておらず、かつバレーボール部にも入っていない
 ($a$さんはテニス部にもバレーボール部にも入っていない)

(4) $s$さんはA高校に通っているか、(または)B高校に通っている
 ($s$さんはA高校か(または)B高校に通っている)

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