2016年6月10日

【高校数学I】集合の基礎2

皆さんこんにちは!
TomoKです。

今日は、2つの集合の「含む」「含まれる」の関係や、
2つの集合から作られる集合を見ていきたいと思います。

[1] 含む,含まれる

2つの集合について、一方が他方を「含む」とか、他方に「含まれる」とかいう関係を、
次で定めます。

定義
$A,B$を集合とする。
(1) $A$の要素がすべて$B$の要素であるとき、
 $B$は$A$を含む, $A$は$B$に含まれる, または$A$は$B$の部分集合である、といい、
 $A\subset B$または$B\supset A$で表す。
(2) $A\subset B$と$B\subset A$が同時に成り立つとき、$A, B$は(集合として)等しいといい、
 $A=B$という。

$A\subset B$
($B\supset A$)
$A$の要素がすべて$B$の要素であるとき、
$A\subset B$ ($A$が$B$に含まれる) と言うことにして、
このとき、$A$は集合として$B$の一部になるので、$A$は$B$の部分集合である、と呼ぶわけです。

$A\subset B$と$B\supset A$は同じ意味で、
これを図にすると右のようになります。

一方、$A$の要素がすべて$B$の要素であり、
しかも逆に$B$の要素がすべて$A$の要素であるなら、
$A$と$B$それぞれの要素が一致するので、
そのときに$A=B$($A$と$B$は等しい)ということにしましょう、
ということです。

特別な集合として、要素を1つもない集合を空集合といい、
記号$\emptyset$で表すことにします。

空集合というのは、要素が1つもない集合です。
「集合」とは「ものの集まり」なのに、なぜ要素(「もの」)がないのが集合なのか、
ときになる方もいるかと思いますが、
そこは「0個のものの集まり」と考えて受け入れてもらいましょう。

つまり、集合は「個数」ではなく「集まり」で決まります。

例えば、2乗して負になる実数はありませんから、
$x^2<0$になるような実数$x$の集合は空集合です。
すなわち、$\{x\mid xは実数\quad かつ\quad x^2<0\}=\emptyset$ ということです。

気を付けてもらいたいのは、
この実数の集合として出てきた$\emptyset$は実数全体の集合に含まれている、
と考えなければなりません。

一般には、「空集合は、どんな集合の部分集合にもなる
すなわち どんな集合$A$に対しても、$\emptyset \subset A$であるということです。
まあ、そのように定めておくとなにかと都合がいい、と考えてもいいでしょう。

練習問題
Q1. $A=\{1,2,4,5,6\},\quad B=\{2,4,6\},$
  $C=\{x \mid xは整数\quad かつ\quad 1\leq x\leq 9\},\quad D=\{x \mid xは整数\}$
  とする。次の□にあてはまる記号を、$\subset, \supset$から選べ。   [解答]
 (1) $A□B$  (2) $B□C$  (3) $A□C$  (4) $D□C$

さて、次のことがすぐにわかります。

部分集合
3つの集合$A,B,C$について、$A\subset B$かつ$B\subset C$ならば、$A\subset B$

[2] 和集合と共通部分, 補集合

集合を用いて問題を考えるとき、「おおもとの集合」$U$を、
問題で必要となる集合が$U$の部分集合になるように設定するが多いです。
そのときに設定した「おおもとの集合」$U$を、全体集合と呼びます。

全体集合$U$の部分集合として2つの集合$A,B$が与えられているとしましょう。
$A\cap B$

$A,B$の両方に共通して属す要素の集合を、
$\orange{A\cap B}$ と書き、
$A,B$の共通部分または交わりといいます。

式で書くと、
$\orange{A\cap B=\{x\mid x\in A\quad かつ\quad x\in B\}}$
となり、
図でかくと右のようになります。


$A\cup B$
一方、$A,B$の少なくとも一方に属する要素の集合を、
$\green{A\cup B}$ と書き、
$A,B$の和集合または結びといいます。

これも式で書けば、
$\green{A\cup B=\{x\mid x\in A\quad または\quad x\in B\}}$
となって、
図では右のようになります。
「少なくとも一方」であって、「一方だけ」ではないので、
$A,B$の両方に属する要素(すなわち$A\cap B$の要素)も$A\cup B$に属すことに注意してください。

それ以上に、$\cap$と$\cup$は上下逆になっただけなので、
どっちがどっちなのか分からなくなるならないように注意!
$\cap$が共通部分, $\cup$が和集合ですよ!

これらの定義のもとに、次のことがわかります。

共通部分と和集合の性質
2つの集合$A,B$について、次が成り立つ。
(1) $A\cap A=A,\quad A\cup A=A$
(2) $A\cap B=B\cup A,\quad A\cup B=B\cup A$
(3) $A\cap B\subset A,\quad A\subset A\cup B$
(4) $A\subset B$ ならば $A\cap B=A,\quad A\cup B=B$
(5) $\emptyset \cap A=\emptyset,\quad \emptyset \cup A=A$

(1)と(2)は当たり前ですね。
(3)は上の$A\cap B$や$A\cup B$の図を見るとわかると思います。
(4)も最初のほうの$A\subset B$の図で$A\cap B$や$A\cup B$を考えるとわかります。
さらに、$\emptyset \subset A$だったので、(4)から(5)が言えます。

$\overline{A}$
続いて、全体集合$U$の部分集合$A$に対し、
$A$に属さない元の集合を、$\overline{A}$と書き、
$A$の($U$に対する)補集合といいます。

式で書くと、
$\overline{A}=\{x\mid x\in U\quad かつ\quad x\notin A\}$
となりまして、
図で書けば右のようになります。
$A$に対し、$\overline{A}$とは$U$の$A$以外の部分、となるわけです。

$\overline{A}$は$A$だけでなく全体集合$U$に依存して決まることにも注意しましょう。

補集合に対しても、いくつか基本的な性質が成り立ちます。

共通部分と和集合の性質
全体集合$U$とその部分集合$A,B$について、次が成り立つ。
(1) $\overline{\emptyset}=U,\quad \overline{U}=\emptyset$
(2) $\overline{\overline{A}}=A$
(3) $A\cap \overline{A}=\emptyset,\quad A\cup \overline{A}=U$
(4) $A\subset B$ ならば $\overline{B}\subset \overline{A}$

(1)は何もないところには文字通り「何も入っていない」から、
補集合は全体になる、ということです。
逆に、全体集合の補集合は、何も入らないので、空集合です。

(2)は「Aに属さないものの集合」に属さないものの集合、つまり、それはAですよね。
二重否定は肯定になる、という感じです。

(3)は上の$\bar{A}$の図をみて$A\cap \overline{A}$や$A\cup \overline{A}$を求めてみましょう。
Aと、「Aに属さないものの集合」には共通する要素があるわけがないので、
$A\cap \overline{A}=\emptyset$です。
またすべてのものはAに属すか属さないかのどちらかですから、
$A\cup \overline{A}=U$です。
$A\subset B$ ならば $\overline{B}\subset \overline{A}$

(4)は右の図を見てください。
$A\subset B$のとき、
ピンク色の斜線の$\overline{B}$は、
青斜線の$\overline{A}$に含まれていることがわかると思います。

$A\subset B$とは、
「Aの要素がすべてBの要素である」
ということです。
それを言い換えれば、
「Bの要素でないものはAの要素ではない」
ということになります。
そこで$\overline{A},\overline{B}$の意味を考えると、
$\overline{B}\subset \overline{A}$がいえることがわかります。

例題
EXQ1. 1以上10以下の整数の全体の集合$U$を全体集合とし、その部分集合として
  $A=\{1,2,5,6,8,9\},\quad B=\{2,3,6,7,9\}$を考える。
  このとき、次の集合を求めよ。
 (1) $A\cap B$  (2) $A\cup B$  (3) $\overline{A}$  (4) $A\cap \overline{B}$  (5) $\overline{A\cup B}$

この例題をやります。

(1)は$\orange{A\cap B}$、すなわち$A$と$B$の共通部分です。
したがって、$A$にも$B$にも属するものをすべてとって、
$A\cap B=\bold{\{2,6,9\}}$です。

(2)は$\green{A\cup B}$、すなわち$A$と$B$の和集合です。
したがって、$A$と$B$のどちらか少なくとも一方属するものを見ると、
$A\cup B=\bold{\{1,2,3,5,6,7,8,9\}}$です。
先ほども注意しましたが、「少なくとも一方」ですので、
AとBの両方に属する要素も$A\cup B$に属します。

(3)の$\overline{A}$は、$U$の要素のうち$A$に属さないものの集合です。
だから、1以上10以下の整数で、$A$に属すものを取り去って、
$\overline{A}=\bold{\{3,4,7,10\}}$となります。

(4)の$A\orange{\cap }\overline{B}$は$A$と$\overline{B}$の共通部分ですよね。
ここで、$\overline{B}$は$U$の要素、すなわち1以上10以下の整数のうち、
$B$に属さないものの集合ですから、$\overline{B}=\{1,4,5,8,10\}$です。
これと$A$と両方に属すものを考えると、
$A\cap \overline{B}=\bold{\{1,5,8\}}$となります。

(5)は、今度は$\overline{A\cup B}$ですから、
$U$の要素、すなわち1以上10以下の整数のうち、$A\cup B$に属さないものの集合ですね。
(2)で$A\cup B$を求めてあるので、それらを取り去って残った
$\overline{A\cup B}=\bold{\{4,10\}}$が答えです。

ところで、
この問題で与えられた状況を図に書くと、
右のようになります。
このような集合の図をベン図と呼びます。
(「ベン」はこのような図を考案した人の名前です)
右のベン図を使っても、それぞれのものを求めることができます。

練習問題
Q2. 1以上15以下の整数の全体の集合$U$を全体集合とし、その部分集合として
  $A=\{1,3,5,7,9,11,13,15\},\quad B=\{1,2,3,5,8,13\},\quad C=\{2,3,5,7,11,13\}$を考える。
  このとき、次の集合を求めよ。   [解答]
 (1) $A\cap B$  (2) $B\cup C$  (3) $A\cap C$  (4) $\overline{A}$
 (5) $\overline{A}\cap B$  (6) $\overline{B}\cup \overline{C}$  (7) $\overline{A\cup B}$

さて、次回は、集合や、そのあとの論理のところで大事になる
「ド・モルガンの定理法則」と呼ばれる定理法則を紹介します。

では、今回はここまでです。
お読みくださってありがとうございました。
ではまた!


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練習問題の答え

Q1.
(1) $\supset$  (2) $\subset$  (3) $\subset$  (4) $\supset$

Q2.
(1) $A\cap B=\{1,3,5,13\}$  (2) $B\cup C=\{1,2,3,5,7,8,11,13\}$
(3) $A\cap C=\{3,5,7,11,13\}$  (4) $\overline{A}=\{2,4,6,8,10,12,14\}$
(5) $\overline{A}\cap B=\{2,8\}$  (6) $\overline{B}\cup \overline{C}=\{1,4,6,7,8,9,10,11,12,14,15\}$
(7) $\overline{A\cup B}=\{4,6,10,12,14\}$

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