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2019年2月1日

【第1回垂れ流し模試】第6問解説

皆さんこんにちは!
TomoKです。

今日は「第1回垂れ流し模試」の第6問です。
いよいよ最後ですね。





第6問は確率です。

問題文が長いので問題設定をつかむのが大変だったかもしれません。
ざっくりいうと、

(1) m人がカードにn以下の自然数を書き、それを箱Xに入れた後、
(2) Aが箱Xの中のカード(m枚)から1枚取り出す、

ということでした。

もちろん、問題にあるとおり、
m人それぞれの選ぶ自然数や、
Aが箱Xから取り出すカードは、
いずれも無作為で決まります。

すると、
Aが自分のカードを引くかどうかは、
上の(1)と(2)の両方によって決まります。

問題では、
「Aが箱Xから、自分が書いた数の書かれたカードを引いた」
このときに、
「そのAの引いたカードがAのカードだった」確率を求めよ、
ということを問うています。
ということは、条件付き確率です。

Sを「Aが箱Xから、自分が書いた数の書かれたカードを引く」事象
Tを「Aが箱Xから、自分が数をかいたカードを引く」事象
とすると、
求める確率は、
P_S(T)=\dfrac{P(S\cap T)}{P(S)}です。

ここで、Tが起こるのはSのときだけなので、S\cap T=Tで、
P(S\cap T)=P(T)は、m枚のカードから特定の1枚を取り出す確率に等しいので、
P(S\cap T)=P(T)=\dfrac{1}{m}です。

ここから、P(S)を求めていきます。
この求め方はいろいろありますが、
次のように、Aが箱Xから引いたカードがだれのカードだったかで場合分けするのが
最も楽だと思います。

m人のうち、Aを除くm-1人をB1, …, Bm-1とし、
Aが箱Xから取り出したカードがBk (km-1以下の自然数)である事象をT_kとすると、
S\cap T=TおよびS\cap T_kたちは、どの2つも互いに背反で、
P(S)=P(T)+P(S\cap T_1)+\cdots +P(S\cap T_{m-1})=P(T)+\dsum_{k=1}^{m-1}P(S\cap T_k)
が成り立ちます。

ここでP(T)=\dfrac{1}{m}はさっき求めました。

P(S\cap T_k)を求めてみましょう。
S\cap T_kとは、Aが箱XからBkのカードを引き、
かつBkが書いた数がAの書いた数に等しい事象です。

①Aが箱XからBkのカードを引く確率は, \dfrac{1}{m},

②Bkが書いた数がAの書いた数と等しい確率は、
 n個の自然数から、Aが書いた数と同じ数1個を選ぶ確率に等しいので、\dfrac{1}{n}

よって、
P(S\cap T_k)=\dfrac{1}{m}\cdot \dfrac{1}{n}=\dfrac{1}{mn}
となります。

(ちなみに、①がP(T_k), ②がP_{T_k}(S)にあたります)

これで、P(S)が求められまして、

\begin{aligned} P(S)&=P(T)+\dsum_{k=1}^{m-1}P(S\cap T_k)\\ &=\dfrac{1}{m}+\dsum_{k=1}^{m-1}\dfrac{1}{mn}=\dfrac{n}{mn}+\dfrac{m-1}{mn}\\ &=\dfrac{m+n-1}{mn} \end{aligned}

すなわち、P(S)=\dfrac{m+n-1}{mn}となります。

これでラストスパートです。
求める確率は、
\dfrac{P(S\cup T)}{P(S)}=\dfrac{P(T)}{P(S)}=\dfrac{\frac{1}{m}}{\frac{m+n-1}{mn}}=\bold{\dfrac{n}{m+n-1}}
となります。

別解

さて、P(S)は上で書いた方法以外にも、
次のように、同じ数をかいた人が(A含め)何人いたか
場合分けして求めることもできます。

ただし、この方針の場合、
計算が非常に煩雑になってしまうので注意しなければなりません。

同じ数を書いた人が(A含め)ちょうどl人(lm以下の自然数)いる事象をU_lとします。

このとき、各S\cap U_lたちはどの2つも互いに背反で、
P(S)=P(S\cap U_1)+\cdots +P(S\cap U_m)=\dsum_{l=1}^{m}P(S\cap U_l)
が成り立ちます。

P(S\cap U_l)を求めましょう。
S\cap U_lとは、m人の中のちょうどl人がAと同じ数をかき、
かつそのl人のカードの中から1枚をAが箱Xから取り出す事象です。

m人の中のちょうどl人がAと同じ数をかくのは、

 (a) A以外のm-1人のうちあるl-1人が、Aと同じ数を書き、
      (このl-1人それぞれがAと同じ数を書く確率は\dfrac{1}{n})
 (b) それ以外の(m-1)-(l-1)=m-l人が、
         Aが書いたのとは異なるn-1個のうちから1個をかく
   (このm-l人それぞれがAとは異なる数を書く確率は\dfrac{n-1}{n}

 上の(a), (b)が同時に起こる場合です。
 (a), (b)は互いに独立で、
 さらに、(a)におけるm-1人からn-1人を選ぶ方法も考慮すると、
 m人の中のちょうどl人がAと同じ数をかく確率は、
 \begin{aligned} P(U_l)&=\Comb{m-1}{l-1}\left(\dfrac{1}{n}\right)^{l-1}\left(\dfrac{n-1}{n}\right)^{m-l}\\ &=\Comb{m-1}{l-1}\dfrac{(n-1)^{m-l}}{n^{m-1}} \end{aligned}
 です。
 (l=1のときは(b)を、l=mのときは(a)を、それぞれ考える必要がありませんが、
  a^0=1を考慮すれば、上のP(U_l)の式はいずれの場合もそのまま成り立ちます。)

②Aが箱Xから、Aと同じ数が書かれたカードl枚のいずれか1枚を取り出す確率は、
 P_{U_l}(S)=\dfrac{l}{m}

以上から、
P(S\cap U_l)=P(U_l)P_{U_l}(S)=\Comb{m-1}{l-1}\dfrac{(n-1)^{m-l}}{n^{m-1}}\cdot \dfrac{l}{m}
です。

これでP(S)が計算できます。
が、知識と腕力が必要。

\begin{aligned} P(S)&=\dsum_{l=1}^{m}\left\{\Comb{m-1}{l-1}\dfrac{(n-1)^{m-l}}{n^{m-1}}\cdot \dfrac{l}{m}\right\}\\ &=\dfrac{1}{mn^{m-1}}\green{\dsum_{l=1}^{m}l\Comb{m-1}{l-1}(n-1)^{m-l}}\\ \end{aligned}

\green{\dsum_{l=1}^{m}l\Comb{m-1}{l-1}(n-1)^{m-l}}について、
まずl'=l-1と置き換えてから、2つの和に分けます。

\begin{aligned} &\green{\dsum_{l=1}^{m}l\Comb{m-1}{l-1}(n-1)^{m-l}}\\ =&\dsum_{l'=0}^{m-1}(l'+1)\Comb{m-1}{l'}(n-1)^{m-1-l'}\\ =&\orange{\dsum_{l'=0}^{m-1}\Comb{m-1}{l'}(n-1)^{m-1-l'}}+\purple{\dsum_{l'=0}^{m-1}l'\Comb{m-1}{l'}(n-1)^{m-1-l'}} \end{aligned}

ここで、次の式を使います。

nを自然数として、
[A] \dsum_{k=0}^{n}\Comb{n}{k}x^k=(1+x)^n
[B] \dsum_{k=1}^{n}k\Comb{n}{k}x^{k-1}=n(1+x)^{n-1}

[A]は単なる二項定理ですね。

[B]は[A]の両辺をxで微分すると出てきます。
([B]がk=1から始まっていますが、
[A]のk=0は定数項なので、微分すると消えます。)
あるいは、有名な式
k\Comb{n}{k}=n\Comb{n-1}{k-1}
を使っても、[B]を([A]を使って)示せます。
(その詳細は今回は読者の皆さんに譲ります)

で、まず橙色の方は、[A]を用いて、
\orange{\dsum_{l'=0}^{m-1}\Comb{m-1}{l'}(n-1)^{m-1-l'}}=(1+n-1)^{m-1}=\orange{n^{m-1}}

次に紫色の方は、[B]を使うんですが、
Σの中の指数がl'-1の形になるようにうまく変形します。
ただし、[B]のΣはl'=1から始まるのですが、
もとの紫色のΣのl'=0の項は0なので、
実質l'=1から始まっているのと同じです。
\begin{aligned} \purple{\dsum_{l'=0}^{m-1}l'\Comb{m-1}{l'}(n-1)^{m-1-l'}}&=\dsum_{l'=1}^{m-1}l'\Comb{m-1}{l'}(n-1)^{m-1-l'}\\ &=(n-1)^{m-2}\dsum_{l'=1}^{m-1}l'\Comb{m-1}{l'}(n-1)^{-(l'-1)}\\ &=(n-1)^{m-2}(m-1)\left(1+\dfrac{1}{n-1}\right)^{m-2}\\ &=(n-1)^{m-2}(m-1)\cdot \left(\dfrac{n}{n-1}\right)^{m-2}\\ &=\purple{(m-1)n^{m-2}} \end{aligned}

よって、
\begin{aligned} P(S)&=\dfrac{1}{mn^{m-1}}(\orange{n^{m-1}}+\purple{(m-1)n^{m-2}})\\ &=\dfrac{1}{mn^{m-1}}\cdot n^{m-2}(n+m-1)\\ &=\dfrac{m+n-1}{mn} \end{aligned}
となって、やっとのことでP(S)が求められます。

後は本解同様、
\dfrac{P(S\cup T)}{P(S)}=\dfrac{P(T)}{P(S)}=\dfrac{\frac{1}{m}}{\frac{m+n-1}{mn}}=\underline{\dfrac{n}{m+n-1}}
とすれば答えが出ます。

1つの問題でも、見方によって簡単になったり、
逆に見方によってややこしい問題になったりすることがあります。

特に入試問題などだと、突破口が見つけにくかったり、
1つの点に気づくかどうかでそれ以降の処理が楽になったり苦しくなったり
ということがあると思います。

そのあたりを養うのは非常に時間がかかると思いますが、
自分の得意な分野・苦手な分野・志望大学にかかわらず、
いろんな問題を自分で考えながらといて、
疑問点や出来なかった点を解説を読んで解決して、
もう1度自分で真っ新から解いてみて、
の繰り返しでしか得られないのかなあ、
そんなことを思います。

(もちろん時期を見極めたうえで、分野を限定したり、
志望大学を絞った勉強をするのはアリだと思いますが)

今回の「垂れ流し模試」がその役に立つかどうかはわかりませんが、
それでも、問題を見て、
「これどうやって解くんだろう、ちょっと考えてみよう」
と思っていただければ、作者の私としてはうれしい限りです。

と、いうわけで、
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ではまた!

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