2016年8月1日

【高校数学I】背理法

皆さんこんにちは!
TomoKです。

今日は、直接証明するのが難しい場合によく使われる
「背理法」をご紹介します。

背理法」というのは、
「Aを証明するのに、Aでないと仮定して矛盾を導く」証明法です。

「矛盾」というのは、つじつまの合わないことが2つ(以上)ある状態を指します。
つまり、「Aでないと仮定したら、そこから2つ(以上)のつじつまが合わないことが出てくる」
というのが、この背理法です。

1回実例を見てみましょうか。

例題
EXQ1. 背理法によって、次の命題を示せ。
「整数$n$に対し、$n^2$が3の倍数ならば、$n$は3の倍数である。」

今回証明するのは、
「$n^2$が3の倍数ならば、$n$は3の倍数である」ということです。

したがって、背理法の仮定は、この否定の、
$n^2$が3の倍数であって、かつ$n$が3の倍数でない」としておきます。

「$n$が3の倍数でない」ときは、$n$を3でわって1または2余るので、
ある整数$k$を用いて、$n=3k+1$もしくは$n=3k+2$と書けます。

ここで、$n^2$を考えると、
$n=3k+1$のとき、$n^2=(3k+1)^2=9k^2+6k+1=3(3k^2+2k)\underline{+1}$
$n=3k+2$のとき、$n^2=(3k+2)^2=9k^2+12k+4=3(3k^2+4k+1)\underline{+1}$
となって、いずれにしても、$n^2$が3の倍数ではなくなります

今、背理法の仮定では、$n^2$が3の倍数だとしているので、
ここで食い違い、矛盾が起きます。

この矛盾はなぜ起こったかといえば、もともと示すべき命題の否定の
$n^2$が3の倍数であって、かつ$n$が3の倍数でない」を仮定したからで、
つまりはその仮定が間違い、よってもとの
$n^2$が3の倍数ならば、$n$は3の倍数である」が正しい、ということになります。

以上を整理して、この例題の命題の証明を書き上げてみましょう。

[証明]
背理法で証明する。
$n^2$が3の倍数であって、かつ$n$が3の倍数でないと仮定する。
このとき、$n$を3で割ると1または2余るので、
ある整数$k$を用いて、$n=3k+1$または$n=3k+2$と書ける。
ここで、
$n=3k+1$のとき、$ n^2=(3k+1)^2=9k^2+6k+1=3(3k^2+2k)+1$
$n=3k+2$のとき、$n^2=(3k+2)^2=9k^2+12k+4=3(3k^2+4k+1)+1$
となり、いずれの場合も$n^2$が3の倍数でないことになるが、
これは、$n^2$が3の倍数であるという仮定に矛盾する。
以上により、$n^2$が3の倍数ならば、$n$は3の倍数であることが示された。  (終)

背理法の証明は、

背理法の仮定を記す。
 すなわち、これから証明しようとする命題の否定を仮定する。

②その仮定から、つじつまが合わない2つ(以上)の結果を導く。

③②の2つ(以上)の結果が矛盾すること、したがってもとの命題が成り立つことを記す。

の順番で書いていきます。
できれば、背理法の証明をするときには、最初に「背理法で証明する」などと一言断っておくと、
読む人に丁寧な印象を与えます。(何せ、証明というのは論説文ですから)

さて、背理法は、よく「~でない」という形の命題で使われることが多いです。
(もちろんいつもそうとも限りませんが…)
実数に関するトピックとしては、「ある数が無理数であることの証明」によく使われます。

次の例を見てみましょう。

例題
EXQ2. 背理法と上のEXQ1を用いて、$\sqrt{3}$が無理数であることを示せ。

無理数というのは、分数で表すことのできない実数のことでした。
背理法の仮定は、「$\sqrt{3}$が無理数でない」、すなわち、「$\sqrt{3}$が有理数である」です。

有理数であるならば、こんどは分数で表されるということになります。
特に、どんな分数も、約分して、それ以上約分できないようにする(既約分数にする)ことが可能です。
このとき、分母と分子の最大公約数は1となる(互いに素である)ことに注意しましょう。

さて、背理法の仮定によれば、最大公約数が1となる2つの整数$m,n$を用いて、
$\sqrt{3}=\dfrac{m}{n}$と書けることになります。
ここで両辺に$n$をかけることで、$n\sqrt{3}=m$がわかります。

$\sqrt{3}$のままでは扱いにくいので、2乗してしまいましょうか。
すると、$3n^2=m^2\quad \cdots (*)$となって、$m^2$が3の倍数だということがわかります。
すると、上のEXQ1が使えて、$m$が3の倍数と分かります。

そうなると、ある整数$k$を用いて$m=3k$と書けます。
これを$(*)$に代入すると、$3n^2=(3k)^2$すなわち$3n^2=9k^2$となって、
この両辺を3で割ると、$m^2=3k^2$となります。
すると今度は$n^2$が3の倍数なので、
再びEXQ1によって、$n$が3の倍数であることになります。

以上のことから、$m,n$がともに3の倍数であることになりますね
でも、$m,n$の設定は何だったでしょう?
そうですね。$m,n$の最大公約数は1でした
$m,n$がともに3の倍数であれば、最大公約数は3の倍数、少なくとも1ではなくなりますから、
ここで矛盾が発生します。

この矛盾が発生する原因は、もともと「$\sqrt{3}$が有理数である」と仮定したからでした。
よって、この仮定は間違い、したがって結局「$\sqrt{3}$が無理数である」というのが正しい、と分かります。

以上をまとめて、$\sqrt{3}$が無理数であることの証明を清書しましょう。

[証明]
背理法で証明する。
$\sqrt{3}$が無理数でない、すなわち$\sqrt{3}$が有理数であると仮定する。
このとき、最大公約数が1となる2つの整数$m,n$を用いて、$\sqrt{3}=\dfrac{m}{n}$と表せる。
この両辺に$n$をかけると、  $n\sqrt{3}=m$
さらに両辺を2乗して、      $3n^2=m^2\quad \cdots (*)$
したがって、$m^2$は3の倍数となるから、$m$は3の倍数であるので、
ある整数$k$を用いて、$m=3k$とおける。
このとき、$(*)$により、 $3n^2=(3k)^2$ すなわち $3n^2=9k^2$
両辺を3でわって、          $n^2=3k^2$
したがって、$n^2$は3の倍数となるから、$n$は3の倍数である。
ところがこのとき、$m,n$はいずれも3の倍数であり、これは$m,n$の最大公約数が1であることに矛盾する。
以上によって、$\sqrt{3}$は無理数であることが証明された。   (終)

注意したいのは、背理法の証明においては、
矛盾が出るまでは、背理法の仮定を念頭に置いておかなければならない
という点です。
長めの背理法の証明になると、背理法の仮定を忘れて、
「証明内のことが(無条件に)成り立つ」と思い込みがちです。

今回の例だと、$\sqrt{3}=\dfrac{m}{n}$となる、
最大公約数が1の2つの整数$m,n$があたかも存在するかのようにして証明を進めています。
そして、$m,n$がいずれも3の倍数となってしまうという結果に導いています。

しかし、それは、つねに背理法の仮定「$\sqrt{3}$が有理数である」がきいているからこそ、
導かれることに注意しなければならないです。
決して無条件に、そのような$m,n$が存在する、ということではないのです
そして、実際にはそのような$m,n$がない、といえるのは、
その仮定を認めたうえで矛盾が生じた結果としていえることだ、ということになるわけです。

背理法の証明を読む際は、ぜひこの点に注意してください。

練習問題
Q1. 背理法によって、次のことを証明せよ。   [解答]
 (1) 整数$n$に対し、$n^2$が偶数ならば、$n$も偶数であること。
 (2) $\sqrt{2}$が無理数であること。 ((1)を用いてよい)

と、いうわけで、今回はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた!

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練習問題の答え

Q1.
(1) 背理法で示す。
  $n^2$が偶数で、かつ$n$が偶数でない、すなわち、$n$が奇数だと仮定すると、
  ある整数$k$を用いて、$n=2k+1$と書ける。
  このとき、$n^2=(2k+1)^2=4k^2+4k+1=2(2k^2+2k)+1$となり、$n^2$が奇数となるが、
  これは$n^2$が偶数であることに矛盾する。
  以上によって、$n^2$が偶数ならば、$n$が偶数であることが証明された。  (終)

(2) これも背理法で示す。
  $\sqrt{2}$が無理数でない、すなわち、$\sqrt{2}$が有理数であると仮定する。
  このとき、最大公約数が1となる2つの整数$m,n$を用いて、$\sqrt{2}=\dfrac{m}{n}$と書ける。
  この両辺に$n$をかけると、  $n\sqrt{2}=m$
  さらに両辺を2乗して、      $2n^2=m^2\quad \cdots (*)$
  したがって、$m^2$は偶数となるから、(1)より$m$は偶数であるので、
  ある整数$k$を用いて、$m=2k$とおける。
  このとき、$(*)$により、 $2n^2=(2k)^2$ すなわち $2n^2=4k^2$
  両辺を2でわって、          $n^2=2k^2$
  したがって、$n^2$は偶数となるから、$n$は偶数である。
  ところがこのとき、$m,n$はいずれも偶数であり、これは$m,n$の最大公約数が1であることに
  矛盾する。
  以上により、$\sqrt{2}$が無理数であることが証明された。  (終)

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