2016年7月1日

【高校数学I】「かつ」「または」と条件・「ならば」と命題

皆さんこんにちは!
TomoKです。

前回は「命題とは」「条件とは」ということを考えました。
それらを踏まえたうえで、
「それらからいろいろな条件や命題が作れるよ」
というのが今日の話題です。

話を少し簡単にするため、ある集合$U$を全体集合とし、
$U$の要素$x$の条件$p(x), q(x)$を考えます。

そして、$U$の部分集合として、
条件$p(x)$を満たす$x$の集合を$P$, 条件$q(x)$を満たす$x$の集合を$Q$
とします。
(このP,Qをそれぞれ$p(x), q(x)$の真理集合といいます)

[1] 「でない」・「かつ」・「または」

前々回(ド・モルガンの定理)で考えたような感じで、
・条件 「$p(x)$でない」     を満たす$x$の集合は Pの補集合 $\overline{P}$
・条件 「$p(x)$かつ$q(x)$」   を満たす$x$の集合は PとQの共通部分 $P\cap Q$
・条件 「$p(x)$または$q(x)$」 を満たす$x$の集合は PとQの和集合 $P\cup Q$
がわかり、したがって、次の条件バージョンのド・モルガンの定理が成り立ちました。

ド・モルガンの法則(条件ver.) (再掲)
2つの条件$p,q$について、次が成り立つ。
(1) 「$p\orange{かつ}q$」の否定は、「$p\red{でない}\quad \green{または}\quad q\red{でない}$」
(2) 「$p\green{または}q$」の否定は、「$p\red{でない}\quad \orange{かつ}\quad q\red{でない}$」

(これについての練習問題は、上のリンクされているページの下のほうにQ2があります)

[2] 「ならば」

さて、数学で扱う命題は、しばしば「○○ならば△△」という形をしていることがあります。

$p(x)$ならば$q(x)$」 という命題は、
「条件$p(x)$を満たす$x$が、必ず条件$q(x)$を満たす」   …(*)
という意味です。

「$p(x)$ならば$q(x)$」のことを、記号で、「$p(x)\Rightarrow q(x)$」と書きます。

$P$が$p(x)$を満たす$x$の集合、$Q$が$q(x)$を満たす$x$の集合ですから、
$p(x)\Rightarrow q(x)$が正しいということは、言い換えれば、
「$x\in P$ならば$x\in Q$」といっていることになります。
これは集合$P,Q$について$P\subset Q$が成り立ってることにほかなりません。

$p(x)\Rightarrow q(x)$は$P\subset Q$であることと同じこと

注意してほしいことが1つ。
命題$p(x)\Rightarrow q(x)$が真であっても、
$p(x)$を満たさない$x$に対しては、その$x$が$q(x)$を満たすとは限らない
ということです。

これは
「$p(x)\Rightarrow q(x)$という命題は、
仮定($p(x)$)が成りたってないときにどうなるか、ということは述べていない」
という説明をよく聞きます。

さて、ここまでは$p(x)\Rightarrow q(x)$が真である場合を述べてきましたが、
では、$p(x)\Rightarrow q(x)$が偽になる場合はどんな場合か考えましょう。

$p(x)\Rightarrow q(x)$が偽であるということは、
上で言えば(*)が偽であるということです。
それは、
「$p(x)$をみたす$x$で、$q(x)$を満たさないものがある」
ということです。

したがって、
命題$p(x)\Rightarrow q(x)$が偽であることを言うためには、
$p(x)$は成り立っても$q(x)$が成り立たないような$x$が1つでも見つかればOK
ということになりますね。
そのような$x$のことを、命題$p(x)\Rightarrow q(x)$の反例といいます。

例題
EXQ1. 次の命題の真偽を答えよ。
 (1) 実数$x$について、 $x\leqq 1\Rightarrow x\leqq 3$
 (2) 実数$x$について、 $x^2-2x=0\Rightarrow x=2$
 (3) 整数$n$について、 $n$が6の倍数 ⇒ $n$が2の倍数
 (4) △ABCと△PQRについて、 AB=PQ かつ BC=QR かつ CA=RP ⇒ △ABC≡△PQR

簡単な命題なら、
$p(x)$を満たす$x$の集合$P$が、$q(x)$を満たす$x$の集合$Q$に含まれるかどうか
を調べればわかりやすいと思います。
そうでないとき、真であることを示すのであれば、
その命題が真であることを証明する必要があります。

もちろん、命題が偽であることを確認するには、反例が見つかれば十分です。

(1)は、$p(x): x\leqq 1,\quad q(x): x\leqq 3$とおけば、
$P$は1以下の実数の集合, $Q$は3以下の実数の集合です。
下の数直線の図を見ればわかりやすいですが、
1は3より小さいので、$P\subset Q$です。


よって、実数$x$の命題 "$x\leqq 1\Rightarrow x\leqq 3$" はです。

(ちなみにこの(1)の証明には、実数の順序に関する推移性、すなわち、
 実数$a,b,c$に対し、$a\leqq b$かつ$b\leqq c$ならば$a\leqq c$
 を使います。
 [本来は等号がついていないバージョンだが、等号つきでも成り立つ。]
 つまり、$x\leqq 1$とすると、さらに$1\leqq 3$がいえるので、$x\leqq 3$がいえる、という感じです。)

では、(2)ですが、今度はどうでしょうか。
$p(x): x^2-2x=0,\quad q(x): x=2$ですね。
$x^2-2x=0$を$x$の方程式として解くと、$x(x-2)=0$より$x=0,2$となります。
ということは、$p(x)$を満たす実数$x$は0と2の2つです。
すなわち、$P=\{0,2\}$です。

しかし、$q(x)$を満たす$x$は明らかに2だけ、
すなわち$Q=\{2\}$ですから、
$P\subset Q$ではありません
なぜかといえば、PにはQにはない0という要素があるからです。
つまり、$x=0$がこの命題の反例になっています。
実際、$x=0$は$0^2-2\cdot 0=0$より$p(x)$を満たしますが、
$0\neq 2$なので、$q(x)$を満たしません。

ということで、実数$x$の命題 "$x^2-2x=0\Rightarrow x=2$" はです。

(3)ですが、$n$を自然数として、
$p(n): nが6の倍数,\quad q(n): nが2の倍数$ですね。
集合$P=\{n\mid nは6の倍数\},\quad Q=\{n\mid nは2の倍数\}$
を考えれば、6の倍数を思い起こせば$P\subset Q$が成り立ちそうです。

では、これを確かめるにはどうすればよいでしょうか?
$n$が6の倍数($\leftrightarrow$6に整数をかけたもの)ということは、
ある整数$k$を使って、$n=\green{6}k$と書けます。
ここで、この式を少しいじると、
$n=\green{6}k=\purple{2}\cdot 3k$
となります。
いま$k$は整数だから$3k$は整数ですから、
この式から、$n$は確かに2に整数をかけたもの、すなわち2の倍数だとわかります。

つまり、$n$が6の倍数であるとすると、$n$が2の倍数になることがいえたので、
整数$n$の命題 "$n$が6の倍数 ⇒ $n$が2の倍数" はです。

最後の(4)は集合で考えるとややこしいですが、ここは一発!
三角形の合同条件の1つ
「対応する3組の辺がそれぞれ等しい2つの三角形は合同である」
を使えば、△ABCと△PQRについての命題
 "AB=PQ かつ BC=QR かつ CA=RP ⇒ △ABC≡△PQR" はだとわかります。

このように、命題が真であることを言うのに、
私たちが定理などでそれが真だと知っている場合は、
それを述べれば証明になります。
(ただ、人によって、どこまで定理を知ってるかのレベルが変わるので、
それは難しいところですが…
そのようなことを避けるためか、この種の真偽判定ネタが記述式の試験で問われるときに、
「真ならば証明し、偽なら反例を挙げよ」となることがしばしばあります。)

練習問題
Q1. 次の命題の真偽を答えよ。   [解答]
 (1) 実数$x$について、 $x+1=0\Rightarrow x=-1$
 (2) 実数$x,y$について、 $xy=0\Rightarrow x=0$ かつ $y=0$
 (3) 自然数$p$について、 $p$が素数$\Rightarrow p$が奇数
 (4) △ABCで、  ∠B=∠C ⇒ AB=AC
 (5) 四角形ABCDで、 AB=DC かつ AD$\jpara$BC ⇒ 四角形ABCDは平行四辺形 

次回は、「すべて」と「ある」を使った命題を見ていきます。

では、今回はここまで。
お読みくださりありがとうございました。
ではまた!


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練習問題の答え

Q1.
(1) 真  (2) 偽 ($x=0, y=1$などが反例)  (3) 偽 ($p=2$が反例)

(4) 真 (2つの角が等しい三角形は、それらの角を底角とする二等辺三角形である)

(5) 偽 (下の台形ABCDが反例)





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